相続

遺書により指定された受遺者って何?!受遺者と相続人の違いとは?受遺者でも相続税申告は必要?!受遺者について徹底解説!!

亡くなった親族の遺言を読んだとき、相続人以外の人(=受遺者)に財産を残すように書かれていることがあります。

このような遺言が出てきた場合、親族としては、どう振舞えばよいのでしょうか。

また遺言執行者から突然、亡くなった方があなたに財産を渡す旨の遺言が出てきたとの連絡が入ることもあるかもしれません。

あなたが突然、受遺者になった場合、どのように対応をすればよいのでしょうか。

ここでは、遺贈とは何か、受遺者になったらどうすれば良いのか、相続との違いは何か等について、解説していきます。

目次

受遺者の意味とは?

受遺者とは、遺贈によって相続財産を与えられた者をいいます。

まずは、遺贈とは何かについて、ご説明します。

遺贈には包括遺贈と特定遺贈の2種類が存在

遺贈とは、被相続人が遺言によって、無償で自分の財産を他人に与えることをいいます。

遺贈には、特定遺贈、包括遺贈、条件付遺贈、期限付遺贈、補充遺贈、後継遺贈、裾分け遺贈、負担付遺贈など、様々な種類がありますが、よく使われるのは、特定遺贈と包括遺贈です。

特定遺贈とは、遺言者の有する特定の財産を具体的に特定して、無償で与えることをいいます。

例えば、「遺言者は、次の建物を、●●●●に遺贈する。」いうものです。

一方で包括遺贈とは、遺言者が財産の全部又は一部を一定の割合で示して遺贈することをいいます。

包括遺贈の中にも種類がある

包括遺贈には、2つの種類があります。

それは、全部包括遺贈と割合的包括遺贈です。

全部包括遺贈とは、相続財産の全部を他人に取得させようとする遺贈をいいます。

例えば、「遺言者は、全ての財産を、●●●●に包括して遺贈する。」というものです。

一方で、割合的包括遺贈とは、相続財産を複数の他人に分数的割合により取得させようとする遺贈をいいます。

例えば、「遺言者は、全ての財産を、●●●●、▲▲▲▲、■■■■の3名に対して、3分の1ずつの割合で包括して遺贈する。」というものです。

ここまでを図にすると、こうなります。

特定遺贈と包括遺贈の違い

ここまでは遺贈に関して説明してきました。

ここからは受遺者をより正確に理解するために、受遺者とは似て非なるものの違いを見ていくことにしましょう。

受遺者と相続人の違いとは?!

受遺者と相続人は、被相続人が亡くなった際に、被相続人の財産を取得するという点で共通点があります。

もっとも、相続人が被相続人よりも先に亡くなっていた場合には、その相続人の代わりに相続人の子が相続します。

これを、代襲相続といいます。

他方、受遺者が被相続人よりも先に亡くなっていた場合には、その受遺者の代わりに受遺者の子が相続することはありません。

受遺者は、遺言の効力が発生した時点で生存又は存在していなければなりません

受遺者が、遺言の効力が発生する前に他界していた場合には、遺贈は無効となってしまいます。

予備的条項(予備的遺言)とは?!

上記のとおり、遺贈の場合、受遺者は、遺言の効力が発生した時点で生存又は存在していなければなりません。

受遺者が、遺言の効力が発生する前に他界していた場合には、遺贈は無効となってしまいます。

そこで、受遺者が被相続人よりも先に死亡した場合に備えて、遺言に予備的条項を付けておくことが考えられます。

予備的条項とは、例えば、「万一、●●●●が遺言者より前に又は同時に死亡したときは、遺言者は、全ての財産を、▲▲▲▲に包括して遺贈する。」といった条項です。

予備的条項を作成することにより、仮に当初希望していたとおり遺贈ができなかった場合でも、次に希望していたとおり遺贈をすることができます。

受遺者と受贈者の違いとは?!

また受遺者と非常に似ている言葉として受贈者というものがあります。

受贈者とは、贈与を受けた人のことをいいます。

受遺者と受贈者は、無償で財産を受け取るという意味で似ています。

もっとも受贈者は贈与契約に基づき贈与を受けた者ですから、自らが契約当事者となっています。

他方、受遺者は、被相続人が単独で遺言に定めたことにより財産を取得した者ですから、自身が契約をしたという立場にはありません。

ちょっとこの違いはピンとこないかもしれませんね。

ここを理解するには、遺贈と贈与の違いを整理しておく必要があります。

遺贈と贈与の違いとは?

遺贈とは、被相続人が遺言によって、無償で自己の財産を他人に与える処分行為をいいます。

遺贈は、受贈者との間の契約を締結することもなく、被相続人が単独で行うことができます。

また、遺贈は、遺言によって行わなければなりません。

他方、贈与とは、贈与者と受贈者との間の、贈与契約によって行われます

したがって、贈与者だけが行えるものではなく、受贈者との合意が必要になります。

もっとも、契約は口頭によって行うこともできますので、必ずしも契約書を作成する必要はありません。

ポイント

  • 遺贈→被相続人が単独で決定できる
  • 贈与→被相続人と財産を受け取る人(受贈者)の合意のもとに成立する

法人や団体を受遺者に指定することができるって本当?

相続人は、個人のみであり、法人が相続人となることはありません。

他方、受遺者は個人だけでなく、法人がなることもあります

被相続人が、遺言において、法人を受遺者に指定することもあります。

 

受遺者に関する注意点とは?

受遺者が遺贈を受けるには遺言書が必須?!

遺贈とは、被相続人が無償で自己の財産を他人に与えることを、遺言によって行うものです。

したがって、遺贈は、必ず遺言によって行う必要があります

受遺者が遺贈を受けるためには、被相続人が遺言を残すことが必要ですし、その遺言が有効である必要があります。

遺留分は受遺者でも受け取れない?!

包括受遺者(財産の一部もしくは全部を遺贈される人)は、相続人と同じような立場になりますが、相続人ではありません。

したがって、包括受遺者には遺留分はありませんので、遺留分侵害額請求権を行使することはできません

保険金を相続人でない受遺者が受け取れないケースがある

生命保険金の受取人は、特定の個人とする場合と、単に相続人とする場合があります。

そして、受取人を相続人とした場合には、相続人でない受遺者は、保険金を受け取ることができません。

もし、相続人ではない者に対して保険金を受け取らせいのであれば、受取人に個人を特定しておく必要があります。

受遺者は遺産分割協議に参加しなければならない?!

被相続人の遺言がなかった場合には、相続人が遺産分割協議をすることになります。

そして、被相続人が第三者に包括遺贈した場合には、受遺者は受遺された割合の相続分を有する相続人と同様の立場になります。

したがって、包括受遺者は、相続人と同じように遺産分割協議に参加しなければならなくなります

相続放棄があっても受遺者の受遺分には反映されない

相続放棄があった場合には、相続放棄をした相続人が取得するはずだった財産について、他の相続人が取得することになります。

他方、受遺者は、他の相続人が相続放棄をしたとしても取得する財産に違いはありません

遺贈は、遺言において受遺者が受け取る財産が決まっているため、他の相続人が相続放棄したとしても、受遺者が受け取る財産に変化がないためです。

相続人が遺贈に反対したらどうなる?

被相続人が遺言を残していたとしても、相続人全員がその遺言に反対していた場合には、相続人全員により遺産分割を行うことは可能です。

他方、被相続人が遺言により遺贈していた場合には、相続人全員がその遺贈に反対していたとしても、それだけでは遺贈を止めることはできません。

遺贈を止める場合には、相続人全員が反対するとともに、受遺者の納得も得る必要があります。

受遺者の納得が得られない場合には、相続人としては、遺留分が侵害されている場合には、受遺者に対して遺留分侵害額請求権を行使することが考えられます。

また遺言に無効事由がある場合には、相続人としては、遺言の無効を主張することも考えられます。

受遺者が相続人でないときの相続税は2割加算?!

遺贈によって財産を取得した人が、被相続人の一親等の血族、配偶者、代襲相続人である孫以外の人である場合には、相続税が2割加算されることになります。

したがって、受遺者が相続人でない場合には、相続税が2割加算されることになります。

受遺者は、相続税以外にも不動産取得税や登録免許税などの税金もかかるので注意

また受遺者の税金が高くなるのは相続だけではありません。

不動産取得税とは、不動産を取得するときにかかる税金です。

本来だと相続によって不動産を取得した場合には、遺言の有無にかかわらず、不動産取得税については非課税とされています。

しかしながら、受遺者が法定相続人ではない場合、受遺者が不動産の遺贈を受けた場合には非課税とはならず、不動産取得税が課されることになります。

また登録免許税とは、不動産の登記をする際にかかる税金です。

遺贈により不動産を取得する場合にも、登記をする際に、登録免許税を支払う必要があります。

遺言者の法定相続人が受遺者である場合には、登録免許税は軽減されており、固定資産税評価額の0.4%です。

遺言者の法定相続人でない者が受遺者である場合には、登録免許税は、固定資産税評価額の2%です。

生命保険金や退職手当金の非課税など税務上の違いに注意

生命保険金は相続財産ではありませんが、税金の世界では、みなし相続財産となり、相続税の対象となります。

そして、生命保険金の相続税を算出するにあたっては、法定相続人のみに適用される非課税枠があります。

もっとも、法定相続人ではない者を受取人とした場合には、この非課税枠を使うことができません

さらに、法定相続人ではない者には、相続税が2割加算されてしまいます。

これは生命保険だけでなく、退職金に関しても同じです。

被相続人が死亡したことにより、被相続人に支給されるはずであった退職金を受け取った場合には、みなし相続財産となり、相続税の対象となります。

そして、退職金等の相続税を算出するにあたっては、法定相続人のみに適用される非課税枠があります。

もっとも、法定相続人ではない者が退職金等を受け取った場合には、この非課税枠を使うことができません。

さらに、法定相続人ではない者には、相続税が2割加算されてしまいます。

このように、法定相続人ではない者が退職金等を受け取った場合にも、税金が高くなることになります。

受遺者は遺贈を放棄することができる?!

遺贈を放棄する場合はどんな場合?!

受遺者が遺贈を放棄する場合とは、どんな場合でしょうか。

例えば、全部包括遺贈を受けた場合には、被相続人の権利だけでなく義務も含めて承継されることになります。

この場合、被相続人の借金の方が多かった場合には、遺贈を放棄することが考えられます。

また、ある不動産の遺贈を受けたものの、受遺者にとってその不動産は価値がなく、その不動産を取得したくない場合が考えられます。

その他には、被相続人の相続人らから遺贈について強く反対され、今後の人間関係もあることから、あえて遺贈を放棄する場合も考えられます。

遺贈を放棄する手続き①包括受遺者の場合

遺贈を放棄する手続は、包括遺贈の場合と特定遺贈の場合で異なります。

包括遺贈の場合には、包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有するものとされています。

したがって、包括遺贈を放棄する場合には、相続の放棄に関する定めが適用されます。

つまり包括遺贈があったことを知ってから3か月以内に、家庭裁判所に申述することにより、遺贈の放棄をすることになります。

遺贈を放棄する手続き②特定受遺者の場合

他方、特定遺贈の場合には、特定受遺者はいつでも、遺贈を放棄することができます

また特定受遺者は、遺贈義務者または遺言執行者に対して意思表示をすることによって、遺贈を放棄することができます。

家庭裁判所に対して申述する必要もありません。

ポイント

  • 包括受遺者の遺産放棄→3か月以内に家庭裁判所に申述する必要アリ
  • 特定受遺者の遺産放棄→遺贈義務者or遺言執行者に意思表示すればいつでもOK

遺贈と相続の違いとは?!

ここまで読み進めていると、今度は遺贈と相続の違いがあいまいになってきませんか?

冒頭にて、遺贈と贈与の違いは明確になりました。

では遺贈と相続はなにが違うのでしょうか?

 相続は不動産登記が単独でできる

遺贈の場合には不動産登記をする際に、受遺者と遺言執行者の共同申請、または、受遺者と相続人全員の共同申請となります。

このように、遺贈の場合には、不動産登記を共同で申請する必要があります。

他方、相続による登記の場合には、単独で申請することができます。

注意ポイント

  • 相続登記→相続人が単独で登記できる
  • 遺贈登記→受遺者と相続人全員が共同で登記する必要がある

相続は登記がなくても相続債権者に対抗できる

遺贈によって不動産を取得した者は、その不動産の所有権を第三者に対抗するためには、登記を備える必要があります。

他方、相続により不動産を取得した者は、自身の相続分の範囲内であれば、登記を備えなかったとしても、その不動産の所有権を第三者に対抗することができます。

なお、2019年7月1日に改正相続法が施行されたことにより、遺言により不動産を相続した相続人は、自分の相続分を超える部分については、相続登記をしないければ第三者に対抗することができないことになりました。

借地権や借家権について賃貸人の承諾がいらない

被相続人が、土地を賃借して家を建てていたり、建物を借りて自宅として使用していることがあります。

被相続人が、生前、この借地権や借家権を譲渡する場合には、所有者の承諾を得る必要があります。

それでは、被相続人が亡くなった場合には、新しく借地権や借家権を取得した人は、所有者の承諾を得る必要があるのでしょうか。

この点について、借地権や借家権を相続した人は、所有者の承諾を得る必要はありません

他方、借地権や借家権の遺贈を受けた受遺者は、所有者の承諾を得る必要があります

所有者の承諾を得る必要がある場合には、所有者から承諾料を求められる可能性がありますし、所有者からの承諾を得られない場合には裁判所に対して承諾に代わる許可を求めることにもなります。

遺言を作成する際には、遺された人たちを困らせることのないよう、気を付ける必要があります。

相続の遺言のデメリットとは?!

相続の場合には、被相続人の法定相続人が、被相続人の財産を取得することになります。

他方、遺贈の場合には、法定相続人に対しても、法定相続人以外の人に対しても、行うことができます。

したがって、法定相続人以外の人に財産を残したい場合には、遺贈を選択することになります。

また、法人は、相続人にはなれませんが、受遺者になることはできます

したがって、法人に財産を残したい場合には、遺贈を選択することになります。

遺贈登記と相続登記ってどう違うの?!

遺贈と相続で登記の仕方が異なる

先ほども触れましたが、遺贈の登記の申請は、受贈者と遺言執行者が共同して行う必要があります。

そして遺言執行者がいない場合には、受贈者と相続人全員が共同して行う必要があります。

このように遺贈登記の申請は、共同して行わなければなりません。

この点で、単独で登記申請ができる相続登記とは異なります。

遺贈の場合は、第三者への対抗のために登記が必要となる

 受遺者は、遺贈により不動産を取得したとしても、そのことを第三者に対抗するためには、遺贈により不動産を取得したことの登記が必要です。

例えば、被相続人から受遺者に対して土地が遺贈されたものの、被相続人の相続人が同土地を第三者に売却してしまった場合があります。

この場合、受遺者が当該第三者に対して土地の所有権を主張するためには、同土地の登記を備える必要があります。

包括受遺者のみの場合には、遺言執行者の選任が必要になる

遺言書に遺言執行者が選任されていない場合には、受遺者と相続人全員が共同で登記申請をすることになります。

そして、相続人からの協力が得られない場合には、受遺者は、家庭裁判所に対して、遺言執行者を選任する必要があります。

遺言執行者が選任されましたら、受遺者と遺言執行者の共同申請によって、登記申請を行うことになります。

受遺者が遺言執行者に指定されている場合、共同申請人はどうすれば良いの?!

受遺者が遺言により遺言執行者と指定されている場合には、受遺者かつ遺言執行者が登記申請を行うことになります。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?遺言などで法定相続人以外の者に遺贈をする、もしくは遺贈された場合には、この受遺者の考え方や制度をよく理解しておく必要があります。

遺贈について悩まれることがありましたら、弁護士に相談することも検討してみてください。

  • この記事を書いた人
篠 昌義(公認会計士/税理士)

篠 昌義(公認会計士/税理士)

株式会社相談室代表取締役。有限責任監査法人トーマツで大企業から中小企業までの監査やコンサルティング、税理士法人で大企業の法人税から個人の所得税まで幅広く実務を担当したのち、自身も経営者としてシェアリングテクノロジー株式会社(東マ:3989)の取締役CFOから代表取締役まで幅広く経験。東証マザーズ上場の責任者を務めるだけでなく、上場後の事業推進、資金調達、M&A、組織改革などを幅広く企業拡大を牽引。 詳しい経歴・プロフィールは当メディアの運営者情報をご覧ください。

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