






ある親族が亡くなった場合、自分は相続人となるのでしょうか。
自分が相続人となった場合、誰とともに、相続人となるのでしょうか。
複数人が相続人となった場合、自分は、どれくらいの割合で相続できるのでしょうか。
今回は、法定相続人、相続割合について、解説していきます。
目次
法定相続において、遺産をもらえる人、順位、割合は決まっている?!
親族が亡くなった場合に、相続によって、遺産がもらえる人は決まっています。
また、遺産がもらえる人のなかでも、誰がどの割合でもらえるかも決まっています。
ここでは、誰が遺産をもらえるのか、どの割合で遺産をもらえるのか、ご説明します。
法定相続人とは?!相続人との違いとは?!
法定相続人とは、法律により定められた、相続する権利を有する人をいいます。
実際に財産を相続するか否かにかかわらず、法律上は相続する権利を有する人のことを指します。
他方、相続人とは、実際に財産を相続する人のことをいいます。
例えば、相続放棄をした人は、法定相続人ではありますが、実際に財産を相続しませんので、相続人ではないことになります。
もっとも、ほとんどの場合、法定相続人と相続人は重なることになります。
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相続人と被相続人とは?!
被相続人とは、相続の場面で、相続財産を遺して亡くなった人をいいます。
相続人とは、相続の場面で、被相続人から財産を遺された人をいいます。
例えば、父が亡くなり、その父に子がいた場合には、父が被相続人、子が相続人となります。
図解で解説!誰がどれだけ相続できるのか一覧で確認
被相続人の配偶者は、常に相続人となります。
他方、被相続人の血族には、順位があります。
血族の順位
- 第1順位の相続人は,被相続人の子若しくは,その代襲相続人である直系卑属です。
- 第2順位の相続人は,被相続人の直系尊属です。
- 第3順位の相続人は,被相続人の兄弟姉妹です。
第1順位に相続人がいないときに、第2順位の血族が相続人となります。
また、第2順位にも相続人がいないときに、第3順位の血族が相続人となります。
法定相続分は、次の表のとおりです。
▼法定相続分の割合
相続人 | 配偶者 | 血族相続人 |
配偶者と子 | 2分の1 | 2分の1 |
配偶者と直系尊属 | 3分の2 | 3分の1 |
配偶者と兄弟姉妹 | 4分の3 | 4分の1 |








配偶者は常に相続人となる
被相続人の配偶者は、常に、相続人となります。
孫は代襲相続を利用して相続することができる
例えば、父、子、孫の家族がいるケースを考えます。
父が亡くなった場合、本来は相続人となるべき子が父より前に亡くなっていた場合には、子が相続すべき分はどうなるのでしょうか。
この場合には、本来子が相続するはずだった部分については、孫が相続することになります。
これを、代襲相続といいます。
法定相続人の範囲は戸籍謄本で確認する!
いざ相続が開始されたとき、法定相続人の範囲は、どのように確認するのでしょうか。
この点につきましては、まずは、被相続人の出生から死亡までの戸籍を収集します。
被相続人の出生から死亡までの戸籍を集めることによって、被相続人に関する家系図を作成することができます。
その家系図を見ることによって、被相続人の範囲を確認することができます。
遺言がある場合の相続順位はどうなるの?!
被相続人が遺言を残していた場合には、基本的には、その遺言のとおりに相続手続を進めることになります。
この場合には、相続順位というのは、表には出てこないことになります。
遺言には、自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類がある
遺言には、いくつか種類がありますが、よく使われる遺言は、自筆証書遺言と公正証書遺言です。
自筆証書遺言とは、遺言者が、遺言書の全文、日付及び氏名を自分で書き、押印して作成する遺言です。
公正証書遺言とは、公証役場で公証人の力を借りて作成する遺言です。
相続の資格がない場合とはどんな場合?!
推定相続人ではあるものの、相続権を失う場合があります。
それは、相続欠格と相続廃除です。
相続欠格とは、相続秩序を侵害する非行をした相続人の相続権を、法律上当然に剥奪する制裁です。
相続廃除とは、相続欠格には当たらないまでも、被相続人に対する虐待や侮辱があったり、著しい非行があった場合に、被相続人の意思に基づいてその相続人の相続権を剥奪する制度です。
相続欠格や相続廃除が認められた場合には、相続権が剥奪されてしまいます。
相続順位のパターンを理解する!親類がどのように存在していれば相続割合はどうなるの?!
相続人が誰か分かりましたら、次は、それぞれの相続人がどれくらいの相続割合を有しているかです。
相続人のそれぞれの相続割合について、説明してきます。
妻と子供全員が相続する場合
妻と子供全員が相続する場合には、妻の相続割合は1/2です。
子供の相続割合は、1/2です。これを、子供の人数で分けることになります。
仮に子供が3人いた場合には、子供それぞれの相続割合は、1/2×1/3の1/6となります。
子が相続放棄している場合
上記事例で、子の1人が相続放棄した場合には、どうなるのでしょうか。
この場合でも、妻の相続割合は1/2のままです。
子供の相続割合は、1/2です。これを、子供の人数で分けることになります。
子供が3人いるなかでそのうちの子供1人が相続放棄するわけですから、相続放棄をしていない子供それぞれの相続割合は、1/2×1/2の1/4となります。
内縁の妻と子がいる場合
内縁の妻と子がいる場合には、どのような相続割合になるのでしょうか。
内縁とは、事実上は婚姻関係にあるものの、婚姻届が未提出であるために、法律上は配偶者ではない関係をいいます。
内縁の妻の場合には、内縁の夫の相続権はありません。
したがって、内縁の妻と子がいる場合には、子が100%相続することになります。
妻と子と養子に出した子がいる場合
養子に出された子がいる場合には、特別養子か、普通養子かによって、結論が変わります。
特別養子の場合には、実の親との親族関係がなくなるため、養子に出された子は相続人ではなくなります。
他方、普通養子の場合には、実の親との親族関係が残るため、養子に出された子は相続人となります。
子と孫が相続する場合
父の子が2人おり、子供の1人が亡くなっているもののその子(父からみれば孫)がいるケースで、父が亡くなったとします。
この場合には、存命の子と、亡くなった子の子(孫)が相続人となります。
亡くなった子の子(孫)が相続人となることを、代襲相続といいます。
この場合には、子が1/2、孫が1/2の割合で相続することになります。
愛人の子と別の愛人の子がいる場合
被相続人に、子と、甥・姪がいる場合を考えます。
この場合、子が第1順位の相続人となります。
その結果、被相続人に配偶者がいない場合には、子が100%相続します。
先妻と後妻の子の場合
先妻の子(1人)と後妻(存命)の子(1人)がいる場合には、後妻が1/2を相続し、残りの1/2を先妻の子と後妻の子が1/2ずつの割合で相続することになります。
胎児がいる場合
原則として、相続人は、相続開始時に生存していなければなりません。
しかしながら、胎児の場合には、すでに生まれたものとみなして相続権を取得します。
これは、出生の可能性が高いのに相続権がないことは不公平であることと、子の誕生と被相続人の死亡の先後という偶然によって結論を変えないようにするためです。
もっとも、死産の場合には、初めから相続人にならなかったものとされます。
行方不明者がいる場合
遺産分割協議は、相続人の全員で行う必要があります。
したがって、相続人のなかに行方不明者がいる場合には、いつまでも遺産分割協議をすることができなくなります。
この場合、行方不明者について、失踪宣告をすることも考えられます。
失踪宣告によって、失踪者が死亡したものとみなされます。
行方不明者が死亡したとみなされた日が、被相続人の死亡前であるときには、行方不明者はそもそも相続人ではなかったことになります。
行方不明者を除いて、遺産分割協議を進めることができます。
他方、行方不明者が死亡したとみなされた日が、被相続人の死亡後であるときには、行方不明者の相続権は行方不明者の相続人に移ります。
行方不明者の相続人が、遺産分割協議を進めていくことになります。
被相続人より親が先に死亡している場合
被相続人に子がおらず、その親も先に死亡している場合には、兄弟姉妹が相続人となります。
被相続人に配偶者がいる場合には、配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4の割合で相続します。
兄弟姉妹が複数人いる場合には、相続財産の1/4を兄弟姉妹の人数で割ることになります。
相続人がいない場合はどうなる?!
被相続人が財産を残して亡くなったときに相続人が1人もいない場合、その財産は誰のものになるのでしょうか。
被相続人が生前お世話になった人?それとも国に帰属する?その手続きは誰が行うのでしょうか。
ここでは、人が死亡したときに相続人が1人もいない場合や、相続人全員が相続放棄をした場合についての残余財産の帰属とその方法について解説します。
相続財産管理人の選任とは?!
相続財産管理人の制度とは、相続人がいない場合に、相続財産を管理するために、相続財産管理人を選任することをいいます。
相続財産管理人が選任されると、その管理のもと、被相続人の残余財産は、債権者・受遺者・特別縁故者への弁済・引渡し等を経たのちに、最終的に国庫に帰属されることになります。
債権者や受遺者がいれば弁済が生じる?
被相続人に対する債権者に対しては、上で述べたように、相続財産管理人の公正な管理のもとで、残余財産から弁済がなされます。
相続人を捜索するための開示が必要?!
では、相続人がいるか否かがそもそもわからない場合はどうするのでしょうか。
この場合、相続人を把握するため、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍を集め、相続関係図を作成することが有用です。
また、相続人捜索の公告をする場合もあります。
特別縁故者への財産分与とは?!
被相続人に相続人がいないことが確定した場合に、例えば、被相続人の内縁の妻や、献身的な世話をしてきたお隣さん、生活資金を事実上援助してきた人らがいれば、そのような人に被相続人の残した財産を分与させる方が、国に帰属させるよりは良いとの判断から、法律は特別縁故者への財産分与の制度を認めています(民法958条の3)。
ただし、これは特別縁故者の権利ではなく、どのような者が、何を、どれだけ分与されるかは、あくまでも家庭裁判所の裁量によるものと考えられています。
法律は、このような特別縁故者の範囲を、このように規定しています。
特別縁故者の範囲
①被相続人と生計を同じくしていた者(内縁の配偶者、事実上の養子など)
②被相続人の療養看護につとめた者(献身的な世話をした隣人など)
③その他、死者と特別の縁故があった者(生活資金や事業資金を援助してきた者など)
遺言書があればできることには何があるの?







これまでは、遺言がない場合に、相続人は誰がなるのか、どういった割合で相続するのかを説明してきました。
ここでは、遺言があった場合には、相続手続はどう進むのかについて、説明します。
認知をすることができる
認知とは、この子は自分の子であるということを決めることをいいます。
認知により、法律上、親子関係が生まれます。
そして、認知は遺言によって行うこともできます。
財産処分ができる
遺言によって、自身の財産を処分することができます。
特定の財産を特定の人物に譲ることもできます。
後見人、後見監督人の指定ができる
未成年に対して最後に親権をもつ者は、遺言により、その未成年の後見人と後見監督人を指定することができます。
相続人の廃除や廃除の取消ができる
被相続人は、遺言により、相続人の廃除をすることができます。
相続人の廃除とは、被相続人に対する虐待、被相続人に対する重大な侮辱、その他の著しい非行があった場合に、推定相続人から相続権を剥奪することをいいます。
また、被相続人は、遺言により、相続人の廃除を取り消すこともできます。
相続分の指定や指定の委託ができる
被相続人は、遺言で、遺産分割の方法を定めることができます。
また、被相続人は、遺言で、遺産分割の方法を定めることを第三者に委託することもできます。
したがって、被相続人は、相続分を指定することもできますし、相続分の指定を第三者に委託することもできます。
遺産分割方法の指定や指定の委託ができる
被相続人は、遺言で、遺産分割の方法を定めることができます。
また、被相続人は、遺言で、遺産分割の方法を定めることを第三者に委託することもできます。
したがって、被相続人は、遺産分割の方法を指定することもできますし、遺産分割の方法の指定を第三者に委託することもできます。
遺産分割の禁止ができる
被相続人は、遺言で、相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁止することができます。
担保責任の指定ができる
法律上、各共同相続人は他の共同相続人に対して、売主と同じくその相続分に応じて担保責任を負います。
また法律上、各共同相続人は、その相続分に応じ、他の共同相続人が遺産の分割によって受けた債権について、その分割の時における債務者の資力を担保します。
弁済期に至らない債権及び停止条件付きの債権については、各共同相続人は、弁済をすべき時における債務者の資力を担保します。
さらに、法律上、担保の責任を負う共同相続人中に償還をする資力のない者があるときは、その償還することができない部分は、求償者及び他の資力のある者が、それぞれその相続分に応じて分担します(ただし、求償者に過失があるときは、他の共同相続人に対して分担を請求することができません。)。
もっとも、被相続人は、遺言で、これらの担保責任と異なる定めをすることができます。
遺言執行者の指定や指定の委託ができる
遺言執行者とは、被相続人の死後に、遺言内容を実現する手続きを行う者をいいます。
被相続人は、遺言により、遺言執行者を指定することができます。
また、被相続人は、遺言により、遺言執行者の指定を第三者に委託することができます。
遺留分滅殺方法の指定ができる
遺留分を侵害する遺贈が複数あった場合には、その目的の価額の割合に応じて、遺留分侵害額請求権を行使することになります。
被相続人は、遺言により、この遺留分侵害額請求権の行使方法を指定することができます。
遺言により遺産相続の順位を変更することができる
被相続人は、遺言により、相続人の廃除を行うことができます。
相続人の廃除により、相続の順位が変更される場合もあります。




遺留分は必ずもらえる
被相続人が遺言を作成していた場合には、基本的には、遺言のとおりに相続手続を進めることになります。
もっとも、遺言によっても、遺留分を侵害することはできません。
遺留分とは
遺留分とは、一定範囲の相続人に対して、被相続人の財産の一定割合について相続権を保障する制度です。
遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額請求権を行使することができます。
遺留分の割合はどうなるの?!
1 総体的遺留分の割合
総体的遺留分は、遺産全体のうち、遺留分権利者全員に残されるべき割合をいいます。
総体的遺留分は、相続人の構成によって異なります。
相続人が直系尊属のみの場合には、総体的遺留分は被相続人の財産の3分の1です。
それ以外の場合には、総体的遺留分は被相続人の財産の2分の1です。
2 個別的遺留分の割合
個別的遺留分は、総体的遺留分の割合に、法定相続分の割合をかけたものです。
3 計算方法
具体的な遺留分の割合の計算方法は、次のようになります。
父、母、子2人の家族において、父が死亡した場合
(1)父が母にすべての遺産を相続させた場合
ア 総体的遺留分 2分の1
イ 個別的遺留分
子A 2分の1(総体的遺留分)×4分の1(法定相続分)=8分の1
子B 2分の1(総体的遺留分)×4分の1(法定相続分)=8分の1
(2)父が子Aにすべての遺産を相続させた場合
ア 総体的遺留分 2分の1
イ 個別的遺留分
母 2分の1(総体的遺留分)×2分の1(法定相続分)=4分の1
子B 2分の1(総体的遺留分)×4分の1(法定相続分)=8分の1
民法と相続税法という法律の取り扱いに違いはあるの?!
法定相続人の考え方は、民法と相続税法で異なります。
養子縁組をした場合には、民法上は、子として扱われるため、全員、法定相続人となります。
他方、相続税法上は、実子がいる場合には養子は1人まで、実子がいない場合には養子は2人まで、法定相続人に含めることができます。
これは、養子が増えることによって相続税が減額されますので、相続税法上、法定相続人の人数を限定しているのです。
また、相続放棄をした場合には、民法上は、相続人ではなかったものとして扱われます。
他方、相続税法上は、相続税の計算にあたっては、相続放棄がなされたとしても、法定相続人の人数については相続放棄がなかったものとします。
相続人でなくても相続税の申告は必要なのか?!
被相続人が、遺言によって、相続人ではない者に、自身の財産を遺贈することがあります。
この場合、遺贈を受けた者(受遺者)は、相続人ではなくても、被相続人の財産を受け取ったわけですので、相続税申告をする必要があります。
相続に関して疑問があれば弁護士に相談すべき
今回は、法定相続人と相続順位について、解説してきました。
ご自身が相続人か否か、相続人だとして相続割合はいくらか、といった疑問をお持ちであれば、弁護士に相談すると良いと思います。
きっと、疑問点について解消してくれるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
相続の順位は相続が起こる前からしっかりと理解しておかないと、あとで争いにつながるケースなども多々あります。
しっかりと相続の順位やそれにまつわる様々な相続に関する制度を理解しておきましょう。