相続人は、被相続人を必ず相続しなければならないのでしょうか。
被相続人を相続したくない場合には、何か方法があるのでしょうか。
今回は、被相続人の財産を相続しない方法として、遺産放棄と相続放棄について、解説していきます。








目次
- 1 財産放棄の方法は「遺産放棄」と「相続放棄」の2種類
- 2 遺産放棄と相続放棄の違いとは?!
- 3 具体的なケースから遺産放棄と相続放棄のどちらを選択すべきか考える
- 4 遺産放棄の流れとは?!
- 5 相続放棄の流れとは?!
- 6 財産放棄に関しての注意点とは?!
- 6.1 先に遺産処分などをしてしまうと相続放棄ができなくなる?!
- 6.2 相続放棄の申立て期限は相続の開始を知ってから3か月以内なので注意!3か月を超えると難しい
- 6.3 事前に3か月の期限を過ぎてしまいそうだとわかっている場合は伸長の申請が可能
- 6.4 法定相続分の放棄をした場合、他の法定相続人に割り当てられる
- 6.5 法定相続分と相続の順位とは?!
- 6.6 遺留分の放棄は遺言に対して文句を言わないことと同じ?!だから被相続人が死亡する前でも可能
- 6.7 遺留分の放棄は親族ともめたくないから行うもの
- 6.8 遺贈の放棄との違いに注意
- 6.9 相続欠格との違いに注意
- 6.10 相続廃除との違いに注意
- 6.11 口頭で伝えておけば、相続放棄できるということはないので注意
- 6.12 相続放棄手続きをした場合でも、遺族年金や生命保険は受け取ることができる?!
- 6.13 被相続人が税金を滞納したまま亡くなった場合は注意
- 6.14 被相続人に借金の過払い金がある場合は注意
- 6.15 相続人全員が相続放棄手続きをしたらどうなる?!
- 6.16 相続放棄した場合でも、一定期間は財産管理義務がある?!
- 6.17 相続放棄した人の子は代襲相続できないので注意
- 6.18 相続税の計算上相続放棄はなかったことになるので注意
- 7 不明なことがあれば弁護士に相談するべき
- 8 相続税の悩みは税理士に相談
- 9 まとめ
財産放棄の方法は「遺産放棄」と「相続放棄」の2種類
財産放棄の方法には、遺産放棄と相続放棄の2種類が存在します。
財産放棄とは財産を相続せずに放棄すること
被相続人の財産を取得したくない相続人のために、財産を相続しない方法として財産放棄という方法があります。
遺産放棄とは遺産分割協議を通して、遺産を相続せず放棄する旨を示すこと
遺産放棄とは、相続人間の遺産分割協議の中で遺産を相続せずに放棄し、その内容の遺産分割協議書を作成することをいいます。
相続放棄とは、家庭裁判所を通して、相続する権利自体を完全に放棄すること
相続放棄とは、相続人が相続開始による包括承継の効果を全面的に拒否する意思表示であり、家庭裁判所に対して申し立てることによって行うものをいいます。


被相続人に借金などの負の遺産が多額にある場合には、相続放棄を検討する
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。
そのため、被相続人に借金などの負の遺産があっても、この負の遺産を相続しません。
遺産放棄と相続放棄の違いとは?!
このように、被相続人の財産を取得したくない場合には、遺産放棄と相続放棄の2種類の方法があります。
次に、遺産放棄と相続放棄は、どのような違いがあるのか、解説します。
遺産放棄と相続放棄の共通点
遺産放棄も相続放棄の共通点は、いずれも被相続人の財産を相続しないという意味で共通点があります。
遺産放棄を選択するメリットとは?!
遺産放棄は、相続人間の遺産分割協議の中で、遺産を相続せずに放棄する旨表明し、その旨の遺産分割協議書を作成すれば足ります。
ですので、相続放棄のような裁判所の手続を経る必要がありませんので、容易に行うことができます。
遺産放棄を選択するデメリットとは?!
相続放棄と異なり、遺産放棄をしても、相続人であることに変わりはありません。
ですので、遺産分割協議後に被相続人に借金があることが明らかとなった場合、遺産を放棄した者も、この借金の支払いを請求されます。
相続放棄を選択するメリットとは?!
相続放棄は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされます。
ですので、遺産の放棄と異なり、被相続人に借金があっても、相続放棄をした相続人は、その借金を支払う義務を負いません。
相続放棄を選択するデメリットとは?!
相続の放棄をする相続人は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所にその旨の申述をしなければなりません(民法915条1項)。
ですので、相続放棄は、遺産の放棄と異なり、裁判所への手続を要します。


具体的なケースから遺産放棄と相続放棄のどちらを選択すべきか考える
遺産放棄と相続放棄は、それぞれメリットとデメリットがあります。
どちらの手続を選択すべきか、具体例をもとに解説します。
遺産放棄をとるべきケースとは?!
【事例1】
被相続人には、遺産として預貯金500万円ありますが、借金も1000万円あります。
【解説】
相続人が相続を選択した場合、預貯金500万円とともに借金1000万円も承継しなければなりません。
この場合、相続人は、自己の財産から500万円を工面することになります。
他方、相続人が相続の放棄を選択した場合、相続人は500万円を取得することができませんが、1000万円を支払う必要もありません。
ですので、相続人は、500万円を工面する必要もありません。
このように、被相続人の遺産として、財産よりも負債の方が多い時には、相続放棄を選択するべきということができます。
被相続人に多額の借金がある場合は、相続放棄
被相続人に多額の借金がある場合、相続放棄をしなければ、被相続人の権利義務を承継するので、相続人は被相続人の多額の借金を支払わなければなりません。
ですので、被相続人に借金がある場合、相続放棄を選択するべきです。
被相続人に財産があり、借金がない場合は相続(単純承認)
【事例2】
被相続人には、遺産として預貯金500万円があります。借金はありません。
【解説】
相続人は、預貯金として500万円を相続することができます。
被相続人には借金がないので、相続人が借金を支払う必要もありません。
ですので、借金がないのであれば、相続を選択すべきです。
被相続人にどれくらいの財産や借金があるか不明な場合、限定承認
【事例3】
被相続人には、遺産として500万円があります。
借金については、総額が明らかではありません。
【解説】
被相続人に借金がなければ単純相続、借金があれば相続放棄を選択すべきです。
しかしながら、相続人に借金があるか否か分からない場合、単純相続または相続放棄のどちらを選択するか判断することができません。
このような場合、限定承認という方法を選択することができます。
限定承認とは、相続した財産の範囲内で被相続人の借金を支払い余りがあれば相続できるという制度です。
今回、限定承認を選択した場合、仮に借金がなければ、500万円を相続することができます。
他方、仮に借金が1000万円あった場合、遺産の500万円の範囲内で支払いをして、借金500万円を支払う必要がなくなります。


被相続人との間に共有財産が多額にある場合、限定承認
【事例4】
被相続人には、持分2分の1ずつで共有する自宅の土地建物あります(不動産の価値500万円)が、借金も1000万円あります。
【解説】
被相続人には、遺産として500万円ありますが、借金も1000万円あります。
この場合、借金の方が多いため、相続放棄を選択するのが通常です。
しかしながら、相続放棄を選択した場合、遺産である自宅の土地建物(持分2分の1)を相続することができません。
このような場合、限定承認を選択して、先買権という方法により、自宅のうち被相続人の持分2分の1を確保する方法があります。
なお、先買権とは、限定承認した場合の制度です。
限定承認手続のなかで、家庭裁判所に鑑定人を選任してもらい、鑑定人が評価した自宅の価額を支払うことにより、自宅を確保することができる制度です。
相続放棄を選択したうえで、相続財産管理人の申立てを行う方法もあります。
共有者については、共有者が死亡して相続人が不存在の場合に、他の共有者に帰属することになります(民法255条)。
もっとも、これは、相続債権者や受遺者に対する清算手続、特別縁故者に対する財産分与の手続を経て、なお共有持分が残存する場合に、共有者へ帰属することになります(最判平成元年11月24日)。
相続財産申立ての際に予納金が必要になること、共有持分が残存するか定かではありませんので、他の共有者が共有持分を取得できるかは定かではありません。
特定の相続人に遺産を承継させたい場合は、相続放棄か相続分の譲渡を活用
【事例5】
被相続人には、配偶者、長男、長女がいます。
被相続人には、両親、兄弟はいません。
被相続人には、遺産として被相続人及び配偶者が居住していた自宅の土地建物しかありません。
長男及び長女は、配偶者に土地建物を相続してもらいたいと考えています。
【解説】
この場合には、遺産分割協議によって、自宅土地建物を配偶者が相続するものとすることもできます。
長男及び長女は、相続放棄をすることで、被相続人の相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされます。
第2順位、第3順位の相続人もいません。
ですので、配偶者は、単独で自宅の土地建物を相続することができます。
長男及び長女は、自身の相続分を配偶者に譲渡する方法もあります。
長男及び長女が相続分を配偶者に譲渡した結果、長男及び長女の相続分が配偶者のものになります。
ですので、配偶者は、単独で自宅の土地建物を相続することができます。
遺産トラブルにかかわりたくない場合は相続放棄もあり
【事例1】
被相続人には、配偶者、長男、長女がいます。
被相続人には、遺産として、自宅の土地建物があります。
被相続人には、借金はありません。
配偶者及び長男は、自宅の土地建物につき、争いをしています。
長女は、争いをしている配偶者及び長男と関わりたくないと考えています
【解説】
被相続人の遺産には土地建物があり、借金がないため、単純相続する事例になります。
しかしながら、長女のように他の相続人と関わりたくないという方もいます。
このような場合、相続放棄をすれば、初めから相続人とならなかったものとみなされますので、遺産分割協議に参加する必要はなくなります。
ですので、長女も相続放棄をすることで、配偶者及び長男と関わらないということができます。


被相続人が事業を営んでいた場合は注意
被相続人は事業を営んでいた場合、事業を経営するために借り入れをしていることが多々あります。
また、被相続人が死亡して数年後、突如として請求がくることもあります。
被相続人が事業をしていた場合、財産の調査を慎重に行う必要があります。
そして、借金がある場合には、相続放棄を検討する必要があります。
被相続人の事業を承継する場合は注意
被相続人の事業を承継する場合、被相続人が保証人になっていることが多いです。
また、会社から借り入れをしていることもあります。
被相続人の事業を承継する場合、被相続人の保証の有無、会社から借り入れをしているか否か等、財産の調査を慎重に行う必要があります。
そして、借金がある場合、相続放棄を検討する必要があります。
遺産放棄の流れとは?!
遺産放棄をする場合、どのように進めることになるのか解説します。
遺産放棄の大枠の方法や費用とは?
遺産放棄は、遺産分割協議の中で、財産を相続しない旨表明し、その旨の遺産分割協議書を作成することです。
相続人に対する意思表示で足りるので、特に費用はかかりません。
①遺言書の有無の確認
遺言書がある場合、遺言書に記載された内容を実現させることができます。
これは、法定相続分ではなく、遺言者の意思通りに相続手続を進めることになります。
ですので、まず遺言の有無を確認する必要があります。
②相続人調査
遺言書がない場合、相続人で話し合いを行わなければなりません。
そのため、相続人を確認する必要があります。
相続人の調査は、戸籍謄本で確認することになります。
③相続財産調査
相続人の調査とともに、被相続人の財産を調査しなければなりません。
財産の調査は、被相続人の取引履歴、被相続人の郵便物等から行うことができます。
④遺産分割協議
相続人及び相続財産が確定したら、話合い(遺産分割協議)になります
⑤遺産分割協議書の作成
相続人で話し合いがまとまった場合、遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書はあれば、預貯金の解約・払戻し、不動産の名義変更を進めることができます。


相続放棄の流れとは?!
相続放棄をするにはどのように進めるのか解説します。
相続放棄の大枠の方法や費用とは?
相続放棄は家庭裁判所に対する申述の方法で行います。
費用として、裁判所に提出する戸籍等の資料取得費用、収入印紙、郵券がかかります。
①相続放棄申述書などの書類をそろえる
裁判所に提出する書類として、相続放棄申述書を作成します。
相続放棄申述書の書式は、裁判所のホームページ等にあります。
②家庭裁判所に提出する
相続放棄申述書が完成した後、収入印紙(800円)及び郵券とともに裁判所に提出します。
提出先は、被相続人の最後の住所地を管轄とする家庭裁判所になります。
郵券は、裁判所ごとに異なりますので、申立先の裁判所に確認する必要があります。
③照会書に回答する
裁判所に相続放棄申述書を提出した後、裁判所から照会書が届きます。
この照会書は、被相続人に関する質問、相続人の意向等を確認するものになります。
照会書を記載した後、裁判所に照会書を返送します。
④相続放棄申述受理通知書を受け取る
照会書を返送した後、相続放棄申述受理通知書が届きます。
この通知書を受領したら、相続放棄が認められたことになります。
家庭裁判所によっては郵送で手続きが可能?!
被相続人が遠方に住んでおり、申述書を家庭裁判所の窓口に持っていくことができないことがあります。
このような場合、相続放棄申述書は、郵送にて送付することができます。


財産放棄に関しての注意点とは?!
相続放棄については、家庭裁判所の手続が必要となりますので、注意すべきことがありますので、解説します。
先に遺産処分などをしてしまうと相続放棄ができなくなる?!
相続人に、
①相続財産の全部又は一部の処分
②熟慮期間の経過
③限定承認又は相続放棄後の相続財産の隠匿、処分等の背信的行為
がある場合には、相続人が被相続人の権利義務を全面的に承継するものとして、単純承認がなされたとみなしています(民法921条)。
ですので、相続の効果が相続人に確定的に帰属し、相続放棄ができなくなります。
相続放棄の申立て期限は相続の開始を知ってから3か月以内なので注意!3か月を超えると難しい
相続の放棄をする相続人は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所にその旨の申述をしなければなりません(民法915条1項)。
3か月を過ぎてしますと、相続放棄をすることができません。
申立ての際には、「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」がいつかがポイントになります。
事前に3か月の期限を過ぎてしまいそうだとわかっている場合は伸長の申請が可能
相続人や相続財産の調査により、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月を経過しそうになった場合、相続の承認又は放棄の期間の伸長をすることができます。
3か月を経過しそうになった場合、早めに手続をとっておく必要があります。
法定相続分の放棄をした場合、他の法定相続人に割り当てられる
【事例6】
被相続人には、配偶者、長男、長女がいます。
被相続人には、遺産として、自宅の土地建物があります。
被相続人には、借金はありません。
配偶者及び長男は、自宅の土地建物につき、争いをしています。
長女は、争いをしている配偶者及び長男と関わりたくないと考え、相続放棄をしました。
【解説】
長女が相続放棄をしなかった場合、法定相続分は次のとおりです。
- 配偶者 2分の1
- 長 男 4分の1
- 長 女 4分の1
しかしながら、今回長女が相続放棄をしたため、法定相続分は次のとおりです。
- 配偶者 2分の1
- 長 男 2分の1
今回長女が相続放棄をしたため、長女の相続分が長男に割り当てられました。
法定相続分と相続の順位とは?!
被相続人の配偶者は、常に相続人となります。
他方、被相続人の血族には、順位があります。
相続の順位
第1順位の相続人は、被相続人の子若しくは,その代襲相続人である直系卑属です。
第2順位の相続人は、被相続人の直系尊属です。
第3順位の相続人は、被相続人の兄弟姉妹です。

第1順位に相続人がいないときに、第2順位の血族が相続人となります。
また、第2順位にも相続人がいないときに、第3順位の血族が相続人となります。
相続人に配偶者がいる場合の法定相続分は、次のとおりです。
(1)配偶者・子の場合 配偶者2分の1、子2分の1
(2)配偶者・直系尊属の場合 配偶者3分の2 直系尊属3分の1
(3)配偶者・兄弟姉妹の場合 配偶者4分の3 兄弟姉妹4分の1
配偶者がいない場合、法定相続分は、次のとおりです。
(1)子が数人の場合 均等の相続分を有します(民法900条4号)。
(2)直系尊属が数人の場合 均等の相続分を有します(民法900条4号)。
(3)兄弟が数人いる場合 均等の相続分を有するのが原則であり、半血兄弟姉妹(死亡した被相続人と親の一方のみを共通にする者)全血兄弟がいる場合には、半血兄弟姉妹の相続分は、全血兄弟姉妹の法定相続分の2分の1です(900条4号ただし書き)
遺留分の放棄は遺言に対して文句を言わないことと同じ?!だから被相続人が死亡する前でも可能
遺留分権利者は、相続開始前に家庭裁判所の許可を得て遺留分を放棄することができます(民法1049条1項)。
これは、被相続人の遺言によって自分に財産が割り当てられなかったとしても、遺留分侵害を請求しないというものです。
実質的には、被相続人が作成する遺言に対して異議を述べないという効果があります。
遺留分の放棄は親族ともめたくないから行うもの
被相続人は、本来、自身の残す財産を自由に処分できます。
しかしながら、遺留分に反した場合、遺留分を侵害された相続人は、死後に遺留分侵害額請求をすることができます。
もっとも、遺留分を放棄した相続人は、遺留分の請求することができません。
ですので、遺留分に関する争いは起こりません。
遺贈の放棄との違いに注意
特定遺贈の受贈者は、遺贈を放棄することができます(民法986条1項)
遺贈の放棄に時期的制限がありません。
相手方に対する意思表示で行われ、家庭裁判所での申述も必要ありません。
ですので、相続の開始前に、家庭裁判所の許可を得て行う遺留分の放棄とは異なります。
相続欠格との違いに注意
相続欠格は、相続秩序を侵害する非行をした相続人の相続権を、法律上当然に剥奪する民事上の制裁です。
民法に規定された欠格事由に該当した場合、当然に相続権を失うことになります。
遺留分の放棄は、遺留分権利者が自らの意思で行うものですので、相続権を剥奪する相続欠格と異なります。
相続廃除との違いに注意
相続廃除は、被相続人からみて、自己の財産を相続させるのが妥当ではないと思われるような非行や被相続人に対する虐待・侮辱がある場合に、被相続人の意思に基づいて、当該相続人の相続資格を剥奪する制度です。
遺留分の放棄は、遺留分権利者が自らの意思で行うものですので、相続権を剥奪する相続廃除と異なります。
口頭で伝えておけば、相続放棄できるということはないので注意
相続の放棄をする相続人は、家庭裁判所にその旨の申述をしなければなりません(民法915条1項)。
ですので、口頭で伝えるだけでは、相続放棄はできません。
相続放棄手続きをした場合でも、遺族年金や生命保険は受け取ることができる?!
遺族年金は、当該相続人の固有の権利に基づき、受給するものになります。
被相続人が特定の相続人を保険金の受取人と指定した場合、指定されたものは固有の権利として保険金請求権を取得します。
ですので、相続放棄をした場合でも、受け取ることができます。
被相続人が税金を滞納したまま亡くなった場合は注意
被相続人が税金を滞納していた場合、税金の請求書が届きます。
しかしながら、相続放棄をした場合、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。
ですので、税金も支払う必要はありません。
被相続人に借金の過払い金がある場合は注意
借金がある場合、相続放棄を選択すべきとなります。
しかしながら、被相続人は長年にわたり返済を続けていた場合、過払い金があることがあります。
ですので、相続放棄をする前に、過払い金の有無を確認しておくのが望ましいです。
相続人全員が相続放棄手続きをしたらどうなる?!
相続人全員が相続放棄をした場合には、「相続人のあることが明らかでない」場合にあたり相続財産管理人の申立てを行うことになります(民法951条)。
相続放棄した場合でも、一定期間は財産管理義務がある?!
相続放棄をした者は、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。
しかしながら、相続放棄によって、相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を管理しなければなりません(民法940条)。
相続放棄した人の子は代襲相続できないので注意
代襲相続となる原因は、相続人が相続開始より前に死亡すること、相続人が相続欠格により相続権を失うこと、相続人が相続廃除により相続権を失うことの3つだけです。
ここで、相続人が相続放棄をした場合には、代襲相続は発生しません。
相続税の計算上相続放棄はなかったことになるので注意
基礎控除における相続人の数は、相続の放棄がなかったものとした場合の民法上の相続人の数によることとされているので、相続の放棄は基礎控除に影響を及ぼしません。
ですので、相続の放棄をした者でも、基礎控除の計算では相続人の数に含めます。


不明なことがあれば弁護士に相談するべき
遺産放棄又は相続放棄を検討している場合は、早めに弁護士に相談してください。
特に、相続放棄は、期限がありますので、注意が必要です。
弁護士に相談するメリットとは?
弁護士に相談した場合、遺産放棄又は相続放棄をすべきか、どのように手続を進めるべきかアドバイスを受けられます。
また相続放棄では、必要な書類の取得手続、裁判所への申立て、裁判所からの問い合わせに対する対応を弁護士が行います。
弁護士費用はどれくらいかかる?
弁護士に相談するときの費用は、弁護士事務所によって様々です。
弁護士事務所によっては、相談料が1時間1万円と設定されているところもあります。
また、弁護士事務所によっては、相談料は無料というところもあります。
相続税の悩みは税理士に相談
相続税に関する悩み、相続財産の相続税評価額の計算、相続税申告書の作成方法のことなどは、税理士に相談するのがよいでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
遺産放棄の方法や流れなどについて理解しておくことで、いざ相続が開始された際に、スムーズに対応することができます。
遺産放棄を含む相続に関する制度の理解はしっかりと事前にするようにしておきましょう。