相続

【弁護士監修】秘密証書遺言の書き方の要件から作り方、メリットデメリットなど徹底解説

遺言書の種類には秘密証書遺言というものがあります。

ところで、秘密証書遺言とは、何でしょうか。

遺言書の中では一般的な公正証書遺言や自筆証書遺言に比べて、あまり聞かない遺言かもしれません。

今回は、秘密証書遺言の書き方やメリットについて、詳しく解説していきます。

この記事のまとめ

・秘密証書遺言は遺言書の中でもほとんど作られていないため、あまりおすすめの方法ではない

・遺言書作成が少しでも不安であれば弁護士などの専門家に依頼して作成してもらうべき

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目次

秘密証書遺言って何?!

秘密証書遺言は、遺言者が、遺言書を作成して、これを封印し、この封印した遺言書を公証人1人及び証人2人以上に提出して、自己の遺言書であること並びに筆者の氏名及び住所を申述するものです(民法970条)。

遺言書には、秘密証書遺言以外に、自筆証書遺言と公正証書遺言という方式がある

遺言書には、秘密証書遺言の他に、自筆証書遺言と公正証書遺言があります。

自筆証書遺言は、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押したものになります(民法968条1項)。

もっとも、民法改正により、自筆証書に一体のものとして、相続財産の全部又は一部の目録を添付する場合、その目録については自書する必要はありません(民法968条2項前段)。

公正証書遺言は、遺言者が、公証人に遺言内容を口授して、公証人がこれを筆記して公正証書にしたものになります(民法969条)。

遺言書の方式の種類によって法的効果に違いはない

遺言書は、秘密証書遺言、自筆証書遺言、公正証書遺言の3種類があります。

これは、遺言書の方式が異なるだけであって、遺言書の法的効果は何ら異なりません。

すなわち、遺言書に記載された内容を実現させることができます。

ですので、法定相続分ではなく、遺言者の意思通りに相続手続を進めることができます。

ちなみに法定相続分とは、あらかじめ法律で定められた相続人が受け取る取り分になります。

秘密証書遺言は、遺言内容を誰にも知られたくない場合に使うもの

秘密証書遺言は、遺言者が、遺言書を作成して、これを封印します。

ですので、作成した遺言書の内容を誰にも見せないまま、完成させることができます。

イメージは自筆証書遺言と公正証書遺言の間の立ち位置

自筆証書遺言は、遺言書の内容及びその存在を秘密にすることができます。

公正証書遺言は、遺言書の内容が公証人及び証人に明らかになるとともに、遺言書が作成されたことも明らかになります。

秘密証書遺言は、自筆遺言書と同様に遺言書の内容を秘密にすることができ、公正証書遺言と同様に遺言書が作成されたことが明らかになります。

ですので、秘密証書遺言は、自筆証書遺言及び公正証書遺言のそれぞれの特徴を備えたものになります。

実際に作られている事例はほとんどない

遺言書は、自筆証書遺言又は公正証書遺言が広く利用されています。

自筆証書遺言は、費用がほとんどかからずに作成できるため、費用をかけたくない人が利用しています。

公正証書遺言は、費用はかかりますが、公証人が作成するため、方式を誤るおそれがなく、遺言書が無効になることが少ないため、遺言書の内容を確実に実現したい人に利用されています。

秘密証書遺言は、公証人の関与を経て作成されます。

公正証書遺言よりも費用を抑えることができますが、遺言書が無効になるリスクがあります。

自筆証書遺言と比べ、改ざんされるリスクは減りますが、費用がかかります。また、公証人及び証人の前で申述しなければならないため、手間がかかります。

多くの方は、簡単に作成できる自筆証書遺言か、厳格な手続になるが無効になるリスクを減少させる公正証書遺言が利用されており、どちらかを利用しています。

ですので、中間的な位置づけである秘密証書遺言は、あまり利用されません。

秘密証書遺言で遺言書を作るメリットとは?!

秘密証書遺言を作成するメリットについて、解説します。

遺言書の内容を自筆ではなくパソコンや代筆でも良い

秘密証書遺言は、自筆証書遺言と異なり、全文を自書する必要がありません。

パソコンで作成することもできます。代筆も可能です。

ですので、自書することができない人でも作成することができます。

なお、署名・押印は、遺言者がしなければなりません。

遺言の内容を完全に秘密にすることができる

秘密証書遺言は、遺言者が遺言書を作成して、これを封印し、この封印した遺言書を公証人1人及び証人2人以上に提出して、自己の遺言書であること並びに筆者の氏名及び住所を申述するものです(民法970条)。

公証人及び証人は、封印された遺言書を確認するだけですので、遺言書の内容を知ることはありません。

ですので、遺言者は、遺言の内容を秘密にすることができます。

遺言書を作成したという事実を残すことができる

秘密証書遺言は、封印した遺言書を公証人1人及び証人2人以上に提出して、自己の遺言書であること並びに筆者の氏名及び住所を申述するものです(民法970条)。

ですので、公証人が関与することから、遺言書を作成したという記録は残ります。

遺言者本人が記載したかどうかの確認が不要

秘密証書遺言は、自筆証書遺言と異なり、全文を自書する必要がありません。

パソコンで作成することもできます。代筆も可能です。

そのため、自筆証書遺言と異なり、遺言者が遺言を作成・記載したかどうかを確認する必要はありません。

遺言書の偽造や変造を避けられる

遺言者は、作成した遺言書を封印し、この封印した遺言書を公証人1人及び証人2人以上に提出して、自己の遺言書であること並びに筆者の氏名及び住所を申述するものです(民法970条)。

そして、公証人は、日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人署名・押印します。

ですので、偽造・変造するには封印を破らなければなりませんので、偽造・変造することができなくなります。

秘密証書遺言で遺言書を作るデメリットとは?!

秘密証書遺言を作成するデメリットについて、解説します。

遺言書の内容に不備があった場合、無効(自筆証書遺言と同様、簡単ではない)

秘密証書遺言は、遺言内容を書面で明らかにしなければなりません。

公証人は、作成された遺言書の内容を確認することはありません。

そのため、民法所定の方式を誤ると、無効になってしまうおそれがあります。

2人以上の証人を用意しなければならない

秘密証書遺言は、遺言者が遺言書を封印した後、公証人1人及び証人2人以上に提出して、自己の遺言書であること並びに筆者の氏名及び住所を申述します(民法970条)。

ですので、秘密証書遺言を完成させるためには、公証人の他に、証人2人が必要になります。

手続きに手間がかかる

秘密証書遺言は、遺言者が遺言書を封印した後、公証人1人及び証人2人以上に提出して、自己の遺言書であること並びに筆者の氏名及び住所を申述します(民法970条)。

そのため、遺言者は、公証役場での申述する日程調整、証人2人の確保などをしなければなりません。

自筆証書遺言と異なり、秘密証書遺言を完成させるにあたり、公証役場での手続が必要になります。

公正証書遺言よりは安いが手数料がかかる

秘密証書遺言を作成する際、手数料として1万1000円がかかります。

自筆証書遺言と同様に、開封時に家庭裁判所で検認が必要

遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して検認手続をしなければなりません(民法1004条1項)。

公正証書遺言以外の遺言書では、検認が求められています(民法1004条2項)。

遺言の内容は秘密となるが、遺言を残した事実は知られてしまう

秘密証書遺言は、遺言内容は明らかになりませんが、公証役場で秘密証書遺言を作成した記録は残ります。

原則自身で保管しなければならないため紛失などの恐れがある

秘密証書遺言は、公正証書遺言と異なり、公証役場で保管されません。

ですので、遺言者が保管する場合、遺言書を紛失してしまうおそれがあります。

秘密証書遺言作成や手続きの流れとは?!

 秘密証書遺言は、どのように作成するのかを解説します。

 家族や財産の情報を網羅的に整理する

遺言書は、遺言者が自身の財産をどのように分けるのを意思表示することが多くあります。

遺言者の財産を分ける前提として、遺言者は、自身にどのような財産があるかを把握しなければなりません。

特に、特定遺贈の方法にする場合、遺贈する財産を明らかにすることになります。

そのため、遺言者は、自身の財産を確認する必要があります。

また、遺言者は、相続人に財産を譲り渡す際、誰が相続人かを明らかにしておく必要があります。

そのため、戸籍(除籍、原戸籍)謄本を収集して、相続関係説明図を作成するのがよいでしょう。

財産の配分方法となぜそういう配分方法にしたかを簡単にメモしておく

遺言書は、書き間違えても変更することができます。

しかし、修正する際には、当該場所を指示し、これを変更した旨付記して特にこれを署名し、その変更場所に印を押さなければ効力が生じません(民法968条3項)。

遺言書の加除や変更する箇所が不明確になれば、遺言者の真意が分からなくなってしまい、遺言書が無効になってしまうこともあります。

ですので、書き間違えることは、望ましくありません。

遺言書を作成する際には、どのように配分するのか、配分方法をメモしておくのが良いでしょう。

遺言者が自身で遺言書を作成する

秘密証書遺言は、遺言者が遺言書を作成することになります。

遺言内容については、パソコンで作成することも、代筆してもらうこともできます。

遺言書に自署で署名し、押印する

秘密証書遺言は、遺言内容をパソコンで作成すること、遺言者以外の者に代筆してもらうことができます。

しかし、署名・押印は、遺言書がしなければなりません。

遺言書を封筒に入れ封印する

秘密証書遺言は、作成した遺言書を封じて、遺言書に押印した印章を使用して封印をします。

証人を2人以上用意する

秘密証書遺言は、公証人及び証人2人以上に提出して、自己の遺言書であること並びに筆者の氏名及び住所を申述します(民法970条)。

ですので、公証人の他に、証人2人が必要になります。

この証人2人は、遺言者が手配することができますし、公証役場に依頼して紹介してもらうこともできます。

証人とともに公証役場へ向かう

ですので、遺言者は、証人とともに、公証役場に行きます。

遺言者が公証人に対して、氏名住所を告げる(公証役場で実施)

遺言者は、公証人及び証人2人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書であること並びにその筆者の氏名及び住所を申述します(民法970条1項3号)。

公証人が提出日や申述内容を封紙に記載(公証役場で実施)

公証人は、遺言者が提出した証書に提出日及び遺言者の申述を封紙に記載します(民法970条1項4号)。

遺言者、証人それぞれが署名押印(公証役場で実施)

公証人は、遺言者及び証人とともに、封紙に署名・押印をします(民法970条1項4号)。

秘密証書遺言の文例と保管封筒の見本

1 遺言書

遺言書

遺言者●は、次のとおり遺言する。

 

1 遺言者は、次の不動産を妻●に相続させる。

(1)土地

所在 ●

地番 ●

地目 ●

地積 ●㎡

(2)建物

所在 ●

家屋番号 ●

種類 ●

構造 ●

床面積 ●

2 遺言者は、次の銀行預金を子●に相続させる。

(1)●銀行●支店 口座番号●

(2)●銀行●支店 口座番号●

3 遺言執行者を妻●と指定する。

令和●年●月●日

(住所)

(署名)(押印)←署名・押印は、遺言者が自署しなければなりません。

2 封筒

印の押し方例

この押印は,遺言書で使用したものと同じものを使います。

3 封紙

秘密証書遺言

遺言者は、本日、本職及び下記証人2名の面前に本封書を提出し、この封書は自己のものであって・・・・と申述した。

本旨外要件

住所 ●

職業 ●

遺言者   ●

(●年●月●日生)

上記は印鑑登録証明書の提出により人違いでないことを確認させた。

住所 ●

職業 ●

証人    ●

(●年●月●日生)

住所 ●

職業 ●

証人    ●

(●年●月●日生)

証人は、いずれも民法第974条所定の欠格事由に該当しないことを確認した。

上記遺言者及び証人は各自次に署名押印する。

遺言者   ● ㊞

証人    ● ㊞

証人    ● ㊞

本職次に署名押印する。

令和●年●月●日 下記本職役場においいて

  • 法務局所属

公証人●   ㊞

秘密証書遺言作成に当たっての注意点や知っておきたいこととは?!

 秘密証書遺言を作成するにあたり、どのようなことに注意すべきか解説します。

遺留分を考慮して遺言の内容を決定する必要がある

 遺留分を有する相続人は、配偶者、子(子の代襲相続人を含む。)、直系尊属に限られます。

兄弟姉妹には遺留分は認められていません。

この遺留分は、相続人の一定割合の財産の相続権を保障するものです。

ですので、遺言者が特定の相続人(=受遺者)にすべての財産を相続させようとしても、遺留分だけは受遺者以外の相続人も取得することができます。

遺留分の割合って具体的にどう計算するの?!

遺留分の基本的な割合は、相続人によって異なります。

相続人が、直系尊属のみである場合があります。

被相続人が亡くなり、親のみが相続人の場合です。

この場合には、被相続人の財産の3分の1が遺留分となります。

それ以外の場合には、被相続人の財産の2分の1が遺留分となります。

遺留分侵害額請求の時効や除斥期間は?

遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から、1年以内に行使する必要がある。この1年が時効までの期間です。

相続開始の時から10年を経過するまでに行使する必要があります。

この10年が除斥期間といいます。

遺言によって遺留分侵害額請求する財産を指定するとトラブルになりにくい

改正前の民法では、遺留分減殺請求により、「贈与又は遺贈は遺留分を侵害する限度において失効し、受遺者又は受贈者が取得した権利は右の限度で当然に遺留分権利者に帰属する」としていました(最判昭和57年3月4日民集36巻3号241頁)。

そのため、遺言者は、遺留減殺の方法として、「1有価証券、2預貯金、3不動産」の順に減殺するなどと指定することがで、トラブルを防止することができました。

もっとも、改正により、遺留分権利者は、遺留分侵害額請求権の効果として金銭債権が発生するものとしていますので、減殺方法の指定は必要なくなったと考えられます。

生前に遺留分放棄をしてもらう方法もある?!

遺留分権利者は、相続開始前に、家庭裁判所の許可を受け、遺留分を放棄することができます(民法1049条1項)。

遺留分の放棄は、遺言者の死亡後の紛争を防止するために利用されます。

例えば、婚外子がいる場合に、婚外子に対して事前に財産を贈与しておくかわりに、婚外子には遺留分放棄をしてもらいます。

また、親を介護するために、親と同居する子がいる場合に、親と同居する子以外の子が遺留分を放棄することもあります。

相続と遺贈の使い分けに注意

遺言書の中で、「相続」と「遺贈」の使い方に注意する必要があります。

いずれも財産を譲り渡すという点では異なりません。

しかし、遺贈は、相続人だけではなく第三者にも行うことができます。

これに対し、相続は、相続人にしか行えません。

第三者に財産を「相続させる」ことはできません。

財産の特定のために、預貯金であれば口座番号まで不動産であれば地番や家屋番号が必須

預貯金を相続させる際には、銀行名、支店名、口座番号まで記載する必要があります。

遺言者は、同じ銀行の同じ視点に複数口座を持っていることもあります。

ですので、遺贈させる財産を特定するため、口座番号を記載して対象の預貯金を明確にしなければなりません。

遺言者が土地建物を遺贈する際、住所だけでは不十分です。

土地建物には、それぞれ登記されています。

ですので、土地建物を取得させる際には、土地であれば「所在」「地番」「地目」「地積」、建物であれば「所在」「家屋番号」「種類」「構造」「床面積」等の、登記に記載されている情報で、対象の土地建物を明確にしなければなりません。

全ての財産について相続者を指定する

遺言者の全ての財産につき、誰にどのように分けるのかを明確にします。

例えば、「●は長男及び長女に相続させる」というようなあいまいな記載は、遺言者の死後の紛争を引き起こすきっかけになりかねません。

借入金がある場合、負担者を指定する

借入金についても、誰に弁済させるのかを明らかにします。

借入金を支払ってもらう債権者との関係では、当然に遺言書のとおりになるわけではありませんが、相続税の負担、相続人間の求償等で重要になります。

遺言執行者を指定しておく

遺言書であらかじめ遺言執行者を指定しておきます。

そうすれば、預貯金の解約、相続登記等の手続を円滑に進めることができます。

その他にも、認知手続(民法781条2条)、後見人の指定(民法839条1項)、相続人の廃除に係る手続(893条)等の手続も進めてもらえます。

押印は認印でもかまわないが、封への押印と遺言書に利用した印鑑は同じにする

遺言書には署名・押印をしなければなりません。

この押印は、実印である必要はありません。

しかし、この時使用した印章を使用して、封印をしなければなりません(民法970条1項2号)。

付言事項をうまく利用する

遺言書で相続の割合を法定相続分から変更した場合、遺留分減殺請求をしないよう求めた場合などには、付言事項にその理由を書いたり、家族への言葉を書いたりするのが効果的です。

付言事項は、法的拘束力を有するものではありません。

しかし、遺言書を作成した理由や家族へのメッセージを残すことで、相続人の理解を得られる可能性もあります。

遺言の内容を自筆で記載しておくと、秘密証書遺言書として不備があっても自筆証書遺言として認められる?!

秘密証書遺言が、秘密証書遺言として民法所定の方式に欠けるものあっても、自筆証書遺言に定める方式を具備しているときは、自筆証書遺言としてその効力が認められます(民法971条)。

秘密証書遺言についてその他の注意点や知っておきたいこととは?!

秘密証書遺言を作成するにあたり注意すべきことや検認について解説します。

相続人、受遺者や未成年者、公証役場関係者などは証人になれないため注意

秘密証書遺言を作成し、同証書を封じて、証書に用いた印象で封印した後、これを公証人及び証人2人以上の前に提出して、遺言者の遺言であること並びにその筆者の氏名及び住所を申述しなければなりません(民法970条1項)。

証人は、次の者はなることができません(民法974条)。

・未成年者

・推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族

・公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

ですので、これらの者にあたらなければ、証人になることができます。

自筆証書遺言と違って、2020年7月改正の法務局の保管制度は適用できない

自筆証書遺言については、公的機関である法務局が遺言書の原本を保管する制度ができました。

この制度により、遺言書を確実に保管するとともに、相続人が遺言者が遺言書を作成したことを把握できるようになりました。

そもそも遺言書が必要なケースってどんなとき?!

例えば、あなたには相続人として妻、長男、長女がいます。

あなたの遺産は、現在も妻が居住している自宅の土地建物だけです。

あなたは、自宅の土地建物を妻に相続して欲しいと考えています。

このような場合、遺言書がなければ、遺産分割協議をすることになります。遺産分割協議の際、法定相続分で分けることが一般的ですので、自宅の土地建物を妻が2分の1,長男及び長女が4分の1ずつで相続することになります。

しかし、遺言書を作成すれば、妻に土地建物をすべて相続させることができます。

このように遺言書によって、法定相続分に限られず、遺言者の意思通りに財産を分けることができます。

もし秘密証書遺言を発見したらどうする?速やかに検認へ

 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して検認手続をしなければなりません(民法1004条1項)。

検認に必要な書類とは?!

遺言書の検認を申し立てる際に必要な資料は、次のとおりです。

・申立書

・遺言者の出生から死亡までの戸籍(除籍、原戸籍)謄本

・相続人全員の戸籍謄本(代襲相続が発生する場合では、追加で必要な書類があります。)

・収入印紙800円

・郵券(裁判所ごとに金額が異なります。)

検認せずに、遺言を執行したら5万円以下の罰金

遺言書の保管者は、遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外において開封をした者は、5万円以下の過料になります(民法1005条)。

遺言書の書き換えは何度でもできる?!古い遺言書が無効に

遺言者は、遺言後の事情の変化により、遺言書の内容を変更するため、新しい遺言書を作成することがあります。

このような場合、作成日付が新しいものが有効になります。

そして、作成日付が古い遺言書は、新しい遺言書と抵触する限りで、無効になります。

効力の発生はあくまで遺言者が死亡した時

遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生じます(民法985条)。

遺言内容と事実に矛盾があるときは効力なし

例えば、遺言書に記載されていた不動産がすでに売却されていることがあります。

この場合、当該不動産については、相続人又は第三者に譲り渡すことができません。

ですので、なくなった財産に関する部分は無効になります。

このように、遺言内容と事実に矛盾がある時は、効力が認められません。

遺言書に書くことで得られる効力とは?!

遺言書でなしうる行為は限られています。遺言でなしうるものについて解説します。

子の認知

婚姻していない女性との間のできた子について,遺言で認知することができます(民法781条2項)。

後見人の指定

被相続人が未成年の子を残していた場合、後見人を指定することができます(民法839条1項)

遺贈(相続人以外の受遺者への遺贈も含む)

被相続人は、遺言書を作成することにより、法定相続分ではなく、遺言者の意思通りに相続をさせることができます。

被相続人は、遺言書により、法定相続人以外の第三者にも財産的利益を与えることができます。

寄付

被相続人は、遺言により、第三者にも財産的利益を与えることができます。

被相続人が団体に寄付を希望する場合、遺言による実現することができます。

相続財産の処分

遺言者は、自身の財産を相続人に与えたり、団体に寄付したり、自由に処分することができます。

相続の廃除、廃除の取消

相続の廃除とは、被相続人が、相続欠格事由ほど重大な非行ではないが、自己の財産を相続させるのが妥当ではないと思われるような非行や被相続人に対する虐待・侮辱がある場合に、その相続人の相続資格を剥奪する制度である。

被相続人は、遺言により、廃除を申し立てることができます。

また、反対に、たとえ廃除が確定しても、被相続人は家庭裁判所に廃除の取り消しを求めることができます(民法894条1項)

相続分の指定、指定の委託

被相続人は、相続分を指定することもできます(民法902条)。

例えば、配偶者に4分の3,長男に4分の1と決めることができます。

また、被相続人は、相続分の指定を第三者に委託することもできます。

遺産分割の禁止(一定期間)

遺言者は、相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁止することができます(民法908条)

遺産分割方法の指定、指定の委託

被相続人は、相続人の誰にどの財産を相続させるかを指定することができます(民法908条)。

例えば、配偶者に自宅の土地建物を相続させると決めることができます。

また、被相続人は、遺産分割の方法を第三者に委託することもできます。

遺言執行者の指定、指定の委託

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する者です。

遺言者は、遺言において、遺言執行者を指定することができます。

また、遺言者は、遺言において、遺言執行者の指定を、第三者に委託することもできます。

相続人相互の担保責任

各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任をおいます(民法911条)。

これは、共同相続人間で遺産分割をした際に、不適合のある財産を取得した相続人とそうでない相続人との公平を図るための規定です。

例えば、あなたの相続人として、長男及び長女の2人で、両名で遺産分割した結果、長男が不動産(1000万円),長女が預貯金(1000万円)を相続することにしました。

しかし、長男の取得した不動産の一部が第三者のものであり、取得した不動産が500万円の価値しかありませんでした。

このような場合、500万円を長男及び長女で負担します。今回は、長女が長男に対し250万円を支払います。

特別受益の持ち戻し計算免除

遺言では、特別受益の持ち戻し計算を免除の意思表示をすることもできます。

遺言者が、長男に対し、300万円を贈与しました。

遺言者は、長男に対し、相続とは別にこの300万円を余分に渡したいと考えていました。

このような場合、原則として、300万円を加えたものを相続財産とみなして、相続分を計算した後、長男は、すでに取得した300万円を控除して、具体的な相続分を算定します。

しかし、遺言者が、遺言で300万円の持ち戻し計算を免除する旨意思表示した場合、300万円を加えません。

生命保険金の受取人変更

遺言者は、生前に契約した生命保険の受取人を変更することができます。

遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)があった場合の、減殺方法の指定

改正前の民法では、遺留分減殺請求により、「贈与又は遺贈は遺留分を侵害する限度において失効し、受遺者又は受贈者が取得した権利は右の限度で当然に遺留分権利者に帰属する」としていました(最判昭和57年3月4日民集36巻3号241頁)。

そのため、遺言者は、遺留減殺の方法として、「1有価証券、2預貯金、3不動産」の順に減殺するなどと指定することができました。

もっとも、改正により、遺留分権利者は、遺留分侵害額請求権の効果として金銭債権が発生するものとしていますので、減殺方法の指定は必要なくなったと考えられます。

祭祀承継者の指定(年忌法要等の主催やお墓の管理など)

遺言者は、遺言で祭祀承継者を指定することができます。

祭祀承継者は、墓地・仏具・位牌等に関する権利を取得します。

また、遺言者の年忌法要等を主宰することができます。

遺言書作成や相続の相談は専門家に依頼すべき?!

遺言書を作成したい、相続について分からないことがあるという方は、専門家に相談・依頼をしましょう。

遺言書は、方式を誤ることで無効になってしまう可能性もあります。

ですので、専門家に相談・依頼するのが良いでしょう。

弁護士などの専門家に遺言書の内容に不備がないかなどを確認しておくことが重要?!

自筆証書遺言や秘密証書遺言は、公証人が内容を確認することがありません。

ですので、弁護士などの専門家に相談して、遺言書の内容に不備がないか、方式に誤りがないかを確認しておきましょう。

そもそも遺言書は相続のあらゆる状況を考えて作成する必要があるため非常に難しい

遺言書を作成する際に、注意することは遺留分です。

特定の相続人に財産を相続させても、他の相続人には遺留分があります。

この遺留分を考慮しなければ、遺言者の死亡後に紛争を生じる可能性があります。

ですので、遺留分を踏まえ、どのように財産を分けるかは非常に難しい問題です。

相続税も考慮するなら税理士にも確認するべき?!

遺言者に相続税が発生する場合も、どのように財産を分けるのか非常に重要になります。

相続税の申告の際、各種控除や特例があります。

これをうまく使用することが非常に大切です。

また、あなたには妻、長男、長女がいるとします。

このようなケースで相続税が課される可能性がある場合、あなたの相続(これを一次相続といいます。)だけではなく、妻の相続(これを二次相続といいます。)も踏まえ、遺言書を作成するのが望ましいでしょう。

専門家に遺言書の保管、検認の依頼、遺言執行者、証人などの依頼などもできる

秘密証書遺言は、法務局や公証役場にて保管されないため、紛失してしまうと意味がなくなります。

ですので、専門家に依頼して預かってもらうことも一つの方法です。

秘密証書遺言では、検認手続が避けられません。

ですので、遺言を保管してもらえれば、保管者である専門家が検認手続も行うこともできます。

遺言執行者になってもらうのも、相続手続を円滑に進めるうえで有効です。

なぜなら遺言執行者は、相続人に代わって、遺言者の財産に係る解約等の手続を進めることができるからです。

その他にも、認知手続(民法781条2条)、後見人の指定(民法839条1項)、相続人の廃除に係る手続(893条)等も行います。

秘密証書遺言を作成する際、証人が必要になりますが、専門家は、証人になることもできます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。秘密証書遺言は非常に作成例が少ないですが、遺言書を作成する際の選択肢の一つとして覚えておいて損はないでしょう。

監修者情報

愛知孝介先生

日本弁護士連合会所属 弁護士登録番号54061号

弁護士登録後、大手法律事務所に入所。

相続案件を中心に、年間100件以上の法律相談を受け、解決策を提案する。相続案件にあたっては、税理士、司法書士、宅建士等の他士業と連携のうえ、数多くの案件を解決に導く。

事業承継プランの策定、遺言作成を始めとする相続発生前の紛争回避策の構築を得意とする。

遺産分割協議及び遺留分侵害額請求にあたっては、クライアントの要望の実現に向け、粘り強い交渉を行い、調停・裁判を遂行する。

  • この記事を書いた人
篠 昌義(公認会計士/税理士)

篠 昌義(公認会計士/税理士)

株式会社相談室代表取締役。有限責任監査法人トーマツで大企業から中小企業までの監査やコンサルティング、税理士法人で大企業の法人税から個人の所得税まで幅広く実務を担当したのち、自身も経営者としてシェアリングテクノロジー株式会社(東マ:3989)の取締役CFOから代表取締役まで幅広く経験。東証マザーズ上場の責任者を務めるだけでなく、上場後の事業推進、資金調達、M&A、組織改革などを幅広く企業拡大を牽引。 詳しい経歴・プロフィールは当メディアの運営者情報をご覧ください。

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