相続

【国税OB・税理士監修】相続税の配偶者控除とは?配偶者控除を相続税申告で賢く使う方法をわかりやすく解説

相続税の 配偶者控除について まるっと解説!

相続税の配偶者控除という制度をご存知でしょうか。

簡単に説明すると、夫が亡くなった時に奥さんは夫の遺産を1.6億円までは無税、つまり相続税を支払わずに受け取ることができる制度です。

つまり、実質ほとんどのケースで、亡くなった方の配偶者は亡くなった方の遺産について、相続税を支払わず、好きなだけ受け取ることができるということです。

しかし、実際には好きなだけ受け取ってしまうと、今度はその遺産を受け取った配偶者が亡くなった場合に、子などへ遺産を相続する(二次相続)際に大変なことになってしまいます。

今回は配偶者控除やその落とし穴についてわかりやすく解説していきます。

目次

配偶者控除を使えば、配偶者は課税価格1.6億円まで無税になる

配偶者控除は、最初にもお伝えしたとおり、配偶者については、課税価格1.6億円までの遺産の受け取りに対して相続税がかからないという制度です。

ここで出てきた課税価格というのは、遺産総額から基礎控除額を差し引いた額になります。

配偶者控除の内容や計算方法などについてここでは解説していきます。

配偶者は1.6億円を超えても法定相続分までは無税

さて、ほとんどのケースで配偶者は相続税を支払わなくてよいという話をしましたが、実は、1.6億円を超えたとしても法定相続分までは無税となるというルールがあるところもポイントの一つです。

法定相続分というのは、法律で定められた相続時の取り分の目安のようなものと理解いただければよいかと思います。

配偶者の法定相続分とは?

それでは、配偶者の法定相続分はいくらになるのでしょうか。実は3パターンあります。

亡くなった方(被相続人)に子供がいた場合

配偶者が遺産総額の1/2、子供全員で遺産総額の1/2が法定相続分になります。

例えば子供が3人いたとしたら、以下が法定相続分になります。

法定相続分の割合例

配偶者 1/2

子供A 1/6

子供B 1/6

子供C 1/6

配偶者+子供3人の場合

亡くなった方(被相続人)に子供がいなかったが、親(直系尊属)が存在する(生きている)場合

配偶者が遺産総額の2/3、直系尊属全員で遺産総額の1/3が法定相続分になります。

例えば被相続人の父と母がまだ生きていた場合は、以下が法定相続分になります。

法定相続分の割合例

配偶者 2/3

父   1/6

母   1/6

配偶者+父母2人の場合

亡くなった方(被相続人)に子供もおらず親(直系尊属)もいない場合

配偶者が遺産総額の3/4、兄弟姉妹全員で遺産総額の1/4が法定相続分になります。

例えば兄弟姉妹が4人いた場合は、以下が法定相続分になります。

法定相続分の割合例

配偶者   3/4

兄弟姉妹A 1/16

兄弟姉妹B 1/16

兄弟姉妹C 1/16

兄弟姉妹D 1/16

被相続人に子供もおらず親もいない場合

配偶者控除は税額控除(税額軽減)なので、基礎控除とは性質が異なる

さて、〇〇控除と呼ばれる制度は相続税法においていくつかあります。

控除とついているからといって、全て同じではないということをここではお伝えしておきます。

実は、相続税における控除は基礎控除とそれ以外の控除(配偶者控除など)で大きく性質が異なります

基礎控除は、遺産総額からまず差し引いて、課税価格総額を算出する際に控除できるものであるのに対して、

配偶者控除は、配偶者が最終的に支払うべき相続税額を算出した後、その相続税額を控除することができる制度です。

次で詳しく説明します。

実際の配偶者控除の計算式とは?

実際にどのように配偶者控除の額を決定するのかまずは、一般的な相続税計算の計算式をここでは説明します。

ここでは、遺産総額3億円、配偶者と子ども3人が存在する場合を想定します。

■基礎控除の額

計算例

この場合、法定相続人は4人になりますので、以下で計算します。

基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 4人(法定相続人の数) =5,400万円

■課税総額の計算

計算例

課税総額 = 3億円(遺産総額) ― 5,400万円(基礎控除) = 2億4,600万円

■相続税総額の計算

計算例

A.法定相続分の計算

配偶者の法定相続分 = 2億4,600万円 × 1/2 = 1億2,300万円

子の法定相続分 = 2億4,600万円 × 1/6 = 4,100万円

計算例

B.相続税総額の計算(まずは個別に相続税額を計算しそれを合算します)

配偶者の相続税額

1億2,300万円 × 40%(税率) ― 1,700万円 =3,220万円

子一人分の相続税額

4,100万円 × 20%(税率) - 200万円 = 620万円

ここで、税率はそれぞれの法定相続分に応ずる取得金額(今回の場合は配偶者1億2,300万円、子4,100万円)に対応する税率が定められています。

以下の国税庁のHPの表を参考にしてください。

計算例

C.相続税総額

3,220万円 + 620万円 × 3人 = 5,080万円

■各人の相続税額の計算

相続税総額を取得財産に応じて按分します。

ここでは、配偶者3,000万円残りの子供たちに9,000万円ずつを相続するとします。

計算例

配偶者の相続税額(配偶者控除前)5,080万円×3,000万円÷3億円=508万円

配偶者の相続税額(配偶者控除後)508万円-508万円(配偶者控除)=0円

配偶者の課税価格は1億2,300万円だったため、この508万円の全額が配偶者控除で差し引くことができます。

子(一人分)の相続税額 5,080万円×9,000万円÷3億円=約1,700万円

ここでの計算のポイントは、やはり一度相続税額について、法定相続分を基準として個別に算出し、合計した後で、再度実際に相続する額に応じて相続税額を按分するというところではないでしょうか。

間違いやすい部分なので気を付けましょう。

国税OB岡本先生OnePointアドバイス

日本の相続税額の計算は、「法定相続分課税方式」という方式を採用しており、相続税総額を一度計算してから、各人の相続税額に按分するという特殊な方式になっています。

ですので、遺産総額がわかっていても、相続人の数がわからないと相続税額を計算できないですし、自身が受け取る遺産の総額だけがわかっても相続税額を計算することはできないのです。

よく「遺産〇〇円もらうんだけど相続税何円くらいかかりますか?」といったご相談がくるのですが、その情報だけでは相続税額を計算することはできません。

配偶者の相続分が1.6億円以上法定相続分の範囲を超える場合の計算例

さて、こんなケースはレアかもしれませんが、あえて配偶者が法定相続分を超えて相続を受けるケースでかつ、相続分が1.6億円を超える場合を想定してみましょう。

このケースを見ると、どういう計算で配偶者控除の額を計算するのかがよくわかるかと思います。

さっきの例を少しだけ変えます。

例)遺産総額6億円 配偶者と子ども3人が存在する場合 なお、今回は子どもには一銭も遺産を渡さず、配偶者が全ての遺産をもらうケースを考えます。

■基礎控除の額

この場合、法定相続人は4人になりますので、以下で計算します。

計算例

基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 4人(法定相続人の数) =5,400万円

■課税総額の計算

計算例

課税総額 = 6億円(遺産総額) ― 5,400万円(基礎控除) = 5億4,600万円

■相続税総額の計算

計算例

A.法定相続分の計算

配偶者の法定相続分 = 5億4,600万円 × 1/2 = 2億7,300万円

子の法定相続分 = 5億4,600万円 × 1/6 = 9,100万円

計算例

B.相続税総額の計算(まずは個別に相続税額を計算しそれを合算します)

配偶者の相続税額

2億7,300万円 × 45%(税率) ― 2,700万円 =9,585万円

子一人分の相続税額

9,100万円 × 30%(税率) - 700万円 = 2,030万円

計算例

C.相続税総額

9,585万円 + 2,030万円 × 3人 = 1億5,675万円

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■各人の相続税額の計算

相続税総額を取得財産に応じて按分します。

今回は子には遺産を一切渡さず、全て配偶者が受け取るケースを想定しています。

計算例

配偶者の相続税額(配偶者控除前)1億5,675万円×3億円÷3億円=1億5,675万円

配偶者控除の額の計算

相続税の総額1億5,675万円×(課税価格の合計額5億4,600万円×法定相続分1/2)÷課税価格の合計額5億4,600万円=7,837,5万円

配偶者の相続税額(配偶者控除後)1億5,675万円-7,837.5万円(配偶者控除)=7,837.5万円

このように、無理やり配偶者に多くの相続をさせるようなケースには配偶者控除があっても相続税を支払う可能性はありますが、このようなケースは皆無といってもいいでしょう。

配偶者控除を適用するための4要件とは

配偶者控除は、ただ配偶者であるというだけでは実は適用することはできません

適用するための4要件がありますので、以下説明していきます。

戸籍上の配偶者であるか

まずは、戸籍上の配偶者である必要があります。

したがって、婚姻してすぐであっても適用は受けられますが、逆に内縁の妻などの場合、配偶者控除は認められません。

遺産を隠蔽していないか

遺産を隠蔽していた場合は、その隠していた遺産部分については配偶者控除を受けられないことになっています。

隠ぺいの場合は重加算税が35%~40%課せられるため、その分さらに余分に相続税を払う必要も出てしまいます。

国税OB岡本先生OnePointアドバイス

この要件なんのためにあるの?と思われた方も多いのではないでしょうか。

実はよくあるケースとして、妻がへそくりとしてタンスにずっと大量の現金を隠していて、それを子にも伝えていないケースがあったりするのです。

もし隠ぺいしている資産についても配偶者控除を受けられるとしてしまうと、税務署に見つかっても配偶者控除受けられるからどうせ税金かからないからそのまま隠しておこうとするケースが増えてしまいます。

このような事態を防ぐためにこの隠ぺい資産が税務調査でばれた場合には配偶者控除を適用できないという要件をつけているのです。

ちなみに、相続人間で隠ぺいがバレた場合には、正しく申告すれば大丈夫ですので、あくまで税務調査で隠ぺい資産がばれたら、それに対しては配偶者控除は適用できないと覚えておきましょう。

相続税の申告書を提出しているか

これは、当たり前のようで、意外な落とし穴かもしれません。

実は、相続税の申告書を提出しないと配偶者控除は受けられません

一方で、基礎控除の範囲内すなわち3,000万円程度以内の遺産総額であれば、そもそも相続税を支払う必要がないため、相続税の申告書を提出する必要はありません。

この基礎控除の話とごっちゃにして、「相続税を支払う必要がないなら相続税の申告書を提出する必要がないんでしょ」と間違える人がいます。

先ほどもお伝えしましたが、配偶者控除と基礎控除は性質が大きく異なります。

配偶者控除はあくまで相続税額を計算した上で、控除するものですので、例え控除後に相続税額が0円であったとしても、その計算過程を示す必要があることから相続税の申告書は必要になります。

注意しましょう。

遺産分割が確定しているか

これは当然のことではあります。

配偶者控除はあくまで、配偶者が受け取る遺産の額に相当する部分に対する相続税額を控除するものですので、遺産分割が確定していなければ配偶者控除を受けることはできません

相続税の申告について

では、ここからは相続税の申告について説明していきます。

相続税の申告に必要な書類とは?

まず、相続税の申告に必要な書類についてです。

必要書類

  1. 相続税申告書
  2. 本人確認書類
  3. 全ての相続人の戸籍謄本又は法定相続情報一覧図の写し(相続人と被相続人の関係性を表した図)
  4. 遺言書の写し又は遺産分割協議書の写し
  5. 相続人全員の印鑑証明書
  6. その他特例や軽減税制を受ける場合には必要な添付書類あり

ちなみに、④、⑤の書類は配偶者控除など特定の特例を受ける場合には必須になりますが、受けない場合には、必須ではありません。

詳しくは、下記URLを参照してください。

相続税の申告期限は10か月以内

相続税の申告期限は、相続開始があったことを知った日から10か月以内です。

このように相続関係の期限の規定は死亡した日からではなく、「相続開始があったことを知った日から」となっていることが実はポイントです。

例えば、疎遠な親戚が亡くなったのだけど、亡くなってからだいぶたった後に、ある相続人の弁護士から通知が来た時などには、その通知が来た日が「相続開始があったことを知った日」となります。

ちなみに、このようなケースでは相続人によって相続開始があったことを知った日が大きくずれる可能性もあります。

他の相続人がだいぶ前に相続税の申告期限をむかえていたからといって焦る必要はありません。

期限を遅れたとしても、申告書を出せば配偶者控除は適用できる

申告期限を遅れて、相続税の申告書を提出した場合であっても配偶者控除は適用できます

ただし、無申告加算税などは発生しますので、もし遺産分割協議がまとまらないなどの理由で、相続税の申告書を提出できない場合は、法定相続分で相続税を算出して相続税の申告書を提出しておく必要があります。

ただし、この場合は、遺産分割が終わっていませんので、配偶者控除の適用要件を満たさなくなるため、配偶者控除は受けられません。

遺産分割協議が完了した後で、修正申告を提出し、そこで配偶者控除も忘れずに申告するようにしてください。

「申告期限後3年以内の分割見込書」で、申告期限から3年以内に遺産分割ができれば配偶者控除が受けられる

遺産分割協議が完了しておらず、概算で相続税を計算し相続税申告書を提出する場合には、配偶者控除は受けられませんが、その場合には、「申告期限後3年以内の分割見込書」を相続税申告書に添付するようにしましょう。

これを添付しておけば、修正申告書提出時に配偶者控除を受けることができます。

申告期限から3年経過後も遺産分割がまとまらない場合はどうする?

遺産分割協議が長引いてしまい、3年を超えてしまうことも時にはあります。

そのような場合には、申告期限後3年を経過する日の翌日から2か月を経過する日までに、「遺産が未分割であることをについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出し、承認を受ける必要があります。

もし、承認を受けられた場合には、判決の確定の日などの翌日から4か月以内に遺産分割されれば、配偶者控除を受けることができます。

相続税申告後に新たに遺産が見つかった場合は修正申告

相続税申告後に新たに遺産が見つかった場合は修正申告を提出してください。

修正申告を自主的に提出した場合には罰金的な意味合いのある過少申告加算税は払う必要はありません。

もっとも、本税の利息にあたる延滞税は支払う必要がでてきますので、その点は諦めて払うようにしましょう。

期限後申告(申告を知らなった場合)であっても配偶者控除の適用は可能

さて、そもそも申告義務があることを知らず、「申告期限後3年以内の分割見込書」などの提出もせずに、申告期限を超えてしまった場合はどうなるのでしょう。

結論から言えば、期限後申告であっても配偶者控除は適用できます

ただし、無申告加算税などはかかってきますので、期限後申告は避けるようにした方が良いでしょう。

配偶者が遺産分割の前に死亡していたらどうすればよいの?

被相続人とその配偶者の年齢は近いことが多いということもあり、配偶者が遺産分割の前に死亡するということは往々にしておこります。

このような場合、相続税は2重にかかるのでしょうか。

結論としては、配偶者の納税義務を子である相続人が引き継ぐことになりますが、配偶者控除などの税制を使えるため、ほとんどのケースで配偶者として受け取るはずであった財産には相続税はかかりません

相続税の配偶者控除は子供への影響を考慮すべき(配偶者控除をとりすぎるデメリットとは)

相続税の配偶者控除には実は落とし穴があります。

これが二次相続の問題です。

例えば、夫に1億円の財産があり、妻に2億円の財産があるような場合で、夫が亡くなったとしたら、法定相続分を考えると、子供に5,000万円、妻に5,000万円の相続が発生することになります。

妻の5,000万円は配偶者控除により実質相続税がかかりませんが、気を付けたいのは、妻はこれにより2億5,000万円の財産に増えるということです。

この妻が亡くなった時には、この2億5,000万円を遺産として子に相続されてしまうことになります。

これは相当な税負担になってしまいます。

したがって、二次相続も考えた上で、できる限り、一次相続の段階で子にも相続させておいた方が有利になる可能性があるということです。

また、妻の方がどれくらい生きているかわからないということもあるので、妻にもある程度財産を持ってもらいたいということもあります。

なので、一般的には、法定相続分で一次相続をした後、二次相続に備えて、例えば月310万円ずつ子に贈与をしておき、相続税が多額に発生しないように、相続対策をしておくなどという方法(贈与税の税率が10%で収まる範囲内で贈与しておく方法)がよくとられます。

実際には、相続人の間で感情が働くため、贈与は思ったようには動かないというのがよくあるケースなので、十分に親族間で話し合いをしておくことが実務上重要になってきます。

二次相続を考えて配偶者控除を適用させないと子供が大変なことに

先ほども伝えたように二次相続の問題は非常に重要です。

例えば、法定相続分を無視して、あえて一次相続の段階で子に多めに相続させる方法なども有効になってきます。

なぜ段階をわけて子に相続させるべきなのかここからは詳しく解説いたします。

なぜ、子供の相続税負担が大きくなるのか

なぜ子の相続税負担が大きくなるのかというと、配偶者の税額軽減のような控除がない点と、次で説明する累進課税という課税方式にあります。

累進課税というのは、相続する財産が多ければ多いほど税率が上がる税率の仕組みのことを言います。

相続税計算における累進課税がポイント(二次相続を踏まえた事例とともに)

相続税計算における累進課税の仕組みを実際にここでは解説します。

まずは、下表をご覧ください。

これをみていただくと一目瞭然ではないでしょうか。

すなわち、法定相続分が億を超えてくるようなことになると、税率は40%を超えてくるということです。

特に6億円超になってくると55%という額が相続税でとられてしまいます。

したがって、例えば、1.6億円以下であれば配偶者控除を受けられるからといって、法定相続分を超えて、配偶者が相続をしてしまうようなケースであれば、その分子どもの相続税負担額が最終的に増えてしまうことになりうるということです。

なので、基本的には法定相続分を超える額を配偶者が相続することは避けるべきでしょう。

相続税法改正でできた「配偶者居住権」をうまく利用する

「配偶者居住権」というのは、残された配偶者が被相続人の死亡時に住んでいた建物を亡くなるまでの間、無償で使用することができる権利です。

令和2年4月1日から適用開始となったこの「配偶者居住権」の制度ですが、実際に使い方としては、建物の所有権を子に相続させつつも、配偶者が配偶者居住権を相続するといった方法が一般的です。

これにより、被相続人が亡くなった後の配偶者の居住の安定を確保しつつも、所有権自体は子に相続させることで、二次相続で多額の相続税をとられることを回避することも可能になります。

国税OB岡本先生OnePointアドバイス

配偶者居住権を使った節税には将来的に様々な制約が付いてきます。

本来は子と後妻のような血縁関係がないケースで配偶者の居住権を保護することを目的として作られているものなので、節税対策として利用する際には専門家に相談の上、慎重に検討しましょう。

ちなみに、配偶者居住権の評価方法は民法上定められていません。しかし、国税庁HPなどに記載されている評価方法を利用するのが一般的ですので、調べたいという方は参考にしてください。

参考:国税庁HP 配偶者居住権等の評価

配偶者控除以外の税額控除にはどんなものがあるの?

配偶者控除以外にも相続税における税額控除はありますので、以下説明していきます。

未成年者控除

未成年者控除とは、相続人が未成年者である場合、税額控除を受けられるという制度です。

控除の額は、「(20歳―相続時の年齢)×10万円」で算出されます。

障害者控除

相続人が85歳未満の障害者の場合に税額控除を受けることができる制度です。

障害者控除の額は、「(85歳―相続時の年齢)×10万円」

ちなみに、この10万円という額は一般障害者の場合であり、特別障害者はこの10万円が20万円となります。

相次相続控除

相続が発生してから10年以内に相続が発生した場合に、一定の金額を控除することができる制度を相次相続控除と言います。

相次相続控除の計算式は少し複雑です。

計算式

A×C÷(B-A)×D÷C×(10-E)÷10=相次相続控除額

A:二次相続の被相続人が一次相続で課された相続税額

B:二次相続の被相続人が一次相続で取得した財産額

C:二次相続の相続財産の合計額

D:相次相続控除を受ける相続人が二次相続で取得する財産額

E:一次相続から二次相続までの期間(1年未満は切り捨て)

ただし、B-AよりもCの方が大きい場合、Cの値はB-Aとなります。

贈与税額控除

相続により財産を取得した人が、亡くなる3年前以内に被相続人から贈与を受けていた場合に、その贈与額を相続税の課税価格に加算して、相続税額を計算することになります。

しかし、これで計算した相続税額をそのまま支払ってしまうと、相続税と贈与税が二重にとられてしまうので、相続税額から贈与時に支払った贈与税を差し引くことができます

これを贈与税額控除とよびます。

相続時精算課税制度による贈与の税額控除

相続時精算課税制度とは、親などが子供などに対して財産を贈与する際に2,500万円までは無税で贈与できるという制度です。

この制度を利用しても、2,500万円を超えた分については贈与税が発生します。この贈与税についても、贈与税額控除と同様に相続税額から差し引くことができるという制度が「相続時精算課税制度による贈与の税額控除」になります。

ちなみに、相続時精算課税制度は一般的には節税効果はないと言われており、あまり利用している人がいないのが現状です。

国税OB岡本先生OnePointアドバイス

相続時精算課税制度を適用して贈与を受けた場合は将来的に相続財産に加算して計算しなければならず、制度適用後は110万円の基礎控除は適用できなくなるので一般的に節税効果が少ないのは確かです。

ただし将来値上がりが予想される財産及び賃貸不動や株式など収益を生む財産の場合は節税になる場合もあります。

また生前の意思による分割の前倒しにもなりますので家族構成や財産内容次第でご検討するのが良いと思います。

外国税額控除

国外にある財産を相続により取得した場合は、外国でも相続税のような税金を支払う可能性があります。

すでに外国で相続税のような税金を支払っている場合には、相続税から一定の金額を差し引くことができるという制度が外国税額控除になります。

その他相続税に関する注意点や知っておきたいこととは?!

その他にも相続税に関しての注意点や知っておきたいことなどを以下解説していきます。

平成27年の制度改正で配偶者控除は注目を浴びた(平成27年改正の概要とは)

平成27年の税制改正により相続税は大幅に増税されました。

これにより、負担が大きくなり生活に支障をきたす可能性があることを鑑みて、配偶者控除はより一層利用すべき税額控除として注目を浴びました。

配偶者控除が使えるのは法律上の婚姻関係にあった配偶者のみ

配偶者控除が使えるのは法律上の婚姻関係にあった配偶者のみであることに改めて注意してください。

内縁の妻などには配偶者控除は利用できません。

配偶者控除を使って支払う相続税額が0円になったとしても申告は必須(基礎控除と違う)

こちらも、先ほど説明しましたが、配偶者控除を利用する場合は、相続税の申告が必要になります。

一方で、基礎控除を使って結果的に課税財産が0円になった場合には、相続税の申告は必要ではありません。

間違いやすいポイントですので、注意してください。

相続税以外でも贈与税の特例など配偶者は優遇されている

配偶者は相続税の支払いはほとんどのケースでなくなるという話を前半でしました。

実は贈与税についても配偶者は優遇されています

例えば婚姻期間20年以上の夫婦間で居住用不動産または居住用不動産を取得するための資金贈与をした場合には、2,000万円まで贈与税がかからないという制度(いわゆるおしどり贈与)もあります。

また、この贈与は特定財産贈与として定められており、相続前3年以内の贈与であっても相続税の計算の際に加算する必要がないというのも特徴です。

この制度は贈与税の配偶者控除にあたります。

相続税の計算は税理士にアドバイスを求めるのが重要

相続税の計算は税理士にアドバイスを求めることをおすすめします。

ここでは、税理士にアドバイスを求める場合の注意点や知っておきたいことなどを解説していきます。

税理士の中でも相続税が得意な税理士は一握り

実は、税理士で相続税が得意な人はほんのわずかです。

税理士の業務の主なものは法人税、消費税、所得税の計算やアドバイスになります。

したがって、税理士に相続についてアドバイスを求めるときは、相続税に強い税理士に依頼することが必要不可欠です。

ちなみに、相続税の申告実績が多くても、表面的な計算のみの申告書で預貯金の動き等を検討していない税理士は税務署(調査官)からもマークされているようです。

実績が多いかどうかだけではなく、普段からのコミュニケーションなどを参考に、しっかりとしている税理士であるかどうか、頼りがいがあるかどうかなどを相談者自らで判断する必要があります。

さらに、最近では、リモート面接のみで現地に出向かない税理士や経験の少ない事務員のみが対応している事務所などの申告書は検討が浅く調査対象になりやすいということもありえるようです。

税理士は、相続税申告書の作成以外にも節税に対するアドバイスや相続財産の評価などができる

相続税申告書の作税だけを税理士がすると勘違いされている人も多いのではないでしょうか。

相続税申告書の作成はミスなく作成することが要求されますが、実は節税に関していえば重要なのは不動産などの財産の相続税評価額の算定です。

相続税評価額の算定は、合理的な価格まで評価額を落とすことで、相続税の節税に大きくつながります。

相続税評価額をしっかりと下げられる税理士に依頼することが実は相談者にとって、大きな節税メリットにつながる可能性が高いです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

配偶者控除は非常に有効な税額控除の制度ですが、使い方を間違えると悲惨な状況を招く可能性があります。しっかりと二次相続まで考えて、配偶者控除を利用するようにしましょう。

国税OB 岡本先生

国税OB 岡本先生

国税OB 岡本先生

税理士・行政書士

大学卒業後、平成7年に名古屋国税局に入局後、東海4県下の各税務署及び国税庁税務大学校などの勤務を経て早期退職し、令和元年9月に税理士事務所を開業。

国税組織の中では主に資産課税部門に従事し、数多くの相続税や譲渡所得の調査等に携わってきた経験から、資産課税の実務及び税務調査の立ち会い等を得意分野とする。

岡本篤典税理士・行政書士事務所

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  • この記事を書いた人
篠 昌義(公認会計士/税理士)

篠 昌義(公認会計士/税理士)

株式会社相談室代表取締役。有限責任監査法人トーマツで大企業から中小企業までの監査やコンサルティング、税理士法人で大企業の法人税から個人の所得税まで幅広く実務を担当したのち、自身も経営者としてシェアリングテクノロジー株式会社(東マ:3989)の取締役CFOから代表取締役まで幅広く経験。東証マザーズ上場の責任者を務めるだけでなく、上場後の事業推進、資金調達、M&A、組織改革などを幅広く企業拡大を牽引。 詳しい経歴・プロフィールは当メディアの運営者情報をご覧ください。

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