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【国税OB・税理士監修】相続税の税率はどうやって使うの?相続税計算をわかりやすく解説         

相続税の税率はどのように決まるのか?

相続税の税率は、10%~55%まで段階的に増えていきます。

でも、この相続税の税率はどうやって使うのでしょう。

また、相続税の計算はそもそもどう計算すればいいのでしょう。

わかりやすく解説したいと思います。

目次

相続税の税率について

相続税の税率は単純に遺産総額にかければいいというわけではありません

また、どの税率を使えばいいのかも、初めての人にとっては難しいかもしれません。

相続税の税率は国税庁の速算表を利用する

まず、相続税の税率はどうなっているのでしょうか。

国税庁のHPに相続税の速算表とよばれるものがあります。

実はこれが相続税の税率になります。

相続税の速算表

参考:国税庁HP 相続税の税率

どうやって計算するかというと、法定相続分に応ずる取得金額が例えば、4億円だったとした場合、

4億円は6億円以下ですので、6億円以下の行をみます。

4億円×50%(税率)- 4,200万円(控除額)=1億5,800万円

と計算するという感じです。

ただ、そもそも法定相続分に応ずる取得金額とは何を指すのでしょうか?

これだけ見ても全くわかりませんよね?

後々説明する相続税の計算の一連の流れを見ると理解できると思います。

課税金額が高いほど相続税の税率が高くなる累進課税

この速算表を見ていただけるとわかるかと思いますが、相続税の税率は、とりあえず遺産から債務等のマイナスの財産を差し引いた課税金額(課税価格)が多ければ多いほど高くなってしまうということをまずは覚えておきましょう。

このように課税金額が高ければ高いほど相続税の税率が高くなるような課税制度を累進課税と呼びます。

相続税以外にも、贈与税や所得税もこの累進課税という制度が採用されています。

簡単にいうとお金を持っている(稼いでいる)人からは税金を沢山とるという制度です。

ポイントは法定相続分ごとに累進課税を適用する点

さて、相続税の課税制度に話を戻します。

相続税の課税制度は、法定相続分ごとに累進課税を適用するというのが実は非常にわかりにくいポイントになっています。

法定相続分というのは、法律で定められた相続をもらえる権利のようなものと理解してもらえばよいでしょう。

ここで、法定相続分がどのように定められているのかを簡単に解説しておきます。

配偶者(夫/妻)と子供が法定相続人の場合は半分ずつ

配偶者と子だけの法定相続分の割合

被相続人の配偶者は、常に相続人となります(民法890条)。

そして、配偶者及び子が相続人のときは、配偶者及び子の相続分は、各2分の1ずつとなります(民法900条1号)。

配偶者(夫/妻)と父母が法定相続人の場合には配偶者2/3、直系尊属1/3

配偶者+父母2人の場合配偶者及び直系尊属が相続人のとき(子供がいない時)は、配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1となります(民法900条2号)。

配偶者(夫/妻)と兄弟姉妹が法定相続人の場合には配偶者3/4、兄弟姉妹1/4

配偶者(夫/妻)と兄弟姉妹が法定相続人配偶者及び兄弟姉妹が相続人のとき(子供がおらず、直系尊属も亡くなっている時)は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1となります(民法900条3号)。

また、例えば、子供が2人いる場合は、配偶者が2分の1、子供がそれぞれ4分の1ずつという具合に、配偶者以外の方はその人数で均等に割ることになります。

遺産総額が基礎控除以下の場合は全額が非課税で相続税額は0円

もう一つ重要なことがあります。

そもそも遺産総額が基礎控除と呼ばれる額を超える分が相続税の対象とはなるということです。

逆を言えば、遺産総額が基礎控除以下であれば、まったく相続税はかかりませんし、相続税の申告すらする必要はありません

ちなみに基礎控除の額は以下の式で計算されます。

基礎控除の額の計算式

基礎控除の額=3,000万円+600万円×法定相続人

ここで、またひとつ、「法定相続人」というあまり聞き覚えのない単語が出てきました。

法定相続人とは、簡単にいうと法律で定められた相続を受けることができる人のことを指します。さきほど出てきた法定相続分と合わせて必ず覚えておく必要があるべきものです。

例えば被相続人(亡くなった方)に、配偶者と子供が2人いた場合は、この法定相続人は3人となるといった感じです。

では、法定相続人は具体的に誰になるのでしょうか。

法定相続人は、被相続人(亡くなった人)の配偶者と、被相続人の血族がなります。

まず、被相続人の配偶者は必ず法定相続人になります。

また、被相続人の血族には、順位があり、順位が高い人が一人でもいればその順位にいる人たちが法定相続人となります。

法定相続人んの順位

第1順位の相続人は,被相続人の子もしくは,その代襲相続人である直系卑属(孫)です。

第2順位の相続人は,被相続人の直系尊属(父母)です。

第3順位の相続人は,被相続人の兄弟姉妹です。

第1順位に相続人がいないときに、第2順位の血族が相続人となります。

また、第2順位にも相続人がいないときに、第3順位の血族が相続人となります。

例えば、被相続人に子供がいた場合は、その子供が問答無用で、法定相続人になります。

被相続人に子供がいないが、母が生きていた場合には、母が第2順位にあたりますので、法定相続人になります。

国税OB岡本先生のOnePointアドバイス

法定相続人の数は先妻の子や内縁等で認知した子がいる場合、齢の兄弟姉妹が相続人になる場合は戸籍をよく調べないと誤ることがあります。

高齢者の兄弟姉妹は既に亡くなられている場合はその子が代襲相続人となりますので、相続人関係が複雑になり遺産分割も含めて生前から遺言書を作成する等の相続対策が必要です。

実際の相続税計算を使ってわかりやすく計算方法を解説

相続税の計算は、実はそこまで難しくなく、4ステップで計算できます。

相続税の計算4ステップ

STEP1基礎控除の額を計算

まずは、いきなりですが、基礎控除の計算をします。

基礎控除の額は先ほども説明した通り、以下で計算されます。

基礎控除の額の計算式

基礎控除の額=3,000万円+600万円×法定相続人

STEP2課税総額の計算

相続税の計算に戻ります。

次のステップでは課税総額を計算します。

課税総額の計算式

課税総額 = 遺産総額 ― 基礎控除

で計算される、いうならば税率をかける元となる遺産総額の計算をしているイメージです。

この課税総額が0円以下になれば、相続税は0円となるし、申告も不要であるということを覚えておくとよいでしょう。

STEP3相続税総額の計算

次に相続税総額を計算します。

ここのポイントはなんといっても、法定相続人に法定相続分を相続させたと仮定して、法定相続人ごとに相続税額を計算し、それを足し合わせることで、相続税総額を決定するところです。

いまいちイメージがわかないかもしれませんが、後程、実例で計算をしてみますので、そこで確認してみてください。

STEP4各人の相続税額の計算

いよいよ、最後に各人の相続税額を計算します。

ここでは、STEP3で出した相続税総額を実際に分配する遺産額に応じて按分することになります。

また、配偶者控除や障害者控除といった基礎控除以外の相続税額を直接減額するような効果のある控除もこの最後に按分した相続税総額から差し引くことで最終的に算出します。

ちなみに、配偶者控除や障害者控除についての説明ものちほどします。

実例を使って相続税を計算してみましょう

さて、実際に相続税を実例で計算してみるとイメージがわきやすいと思います。

ここでは、遺産総額3億円、配偶者と子ども3人が存在する場合を想定します。

  • 基礎控除の額

この場合、法定相続人は4人になりますので、以下で計算します。

計算例

基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 4人(法定相続人の数) =5,400万円

  • 課税総額の計算

計算例

課税総額 = 3億円(遺産総額) ― 5,400万円(基礎控除) = 2億4,600万円

  • 相続税総額の計算

A法定相続分(法定相続分に応ずる取得金額)の計算

計算例

配偶者の法定相続分(法定相続分に応ずる取得金額) = 2億4,600万円 × 1/2 = 1億2,300万円

子の法定相続分(法定相続分に応ずる取得金額) = 2億4,600万円 × 1/6 = 4,100万円

B相続税総額の計算(まずは個別に相続税額を計算しそれを合算します)

計算例

配偶者の相続税額

1億2,300万円(法定相続分に応ずる取得金額) × 40%(税率) ― 1,700万円 =3,220万円

子一人分の相続税額

4,100万円(法定相続分に応ずる取得金額) × 20%(税率) - 200万円 = 620万円

ここで、最初に説明した速算表を利用するところがようやく出てきました。

この税率をかける元となる金額こそが速算表でいうところの「法定相続分に応ずる取得金額」というわけです。

参考:国税庁HP 相続税の税率

C相続税総額

計算例

3,220万円 + 620万円 × 3人 = 5,080万円

  • 各人の相続税額の計算

相続税総額を取得財産に応じて按分します。

ここでは、配偶者3,000万円、残りの子供たちに9,000万円ずつを相続させるとします。

計算例

配偶者の相続税額(配偶者控除前)5,080万円×3,000万円÷3億円=508万円

配偶者の相続税額(配偶者控除後)508万円-508万円(配偶者控除)=0円

配偶者の課税価格は1億2,300万円だったため、この508万円の全額が配偶者控除で差し引くことができます。

配偶者控除については、後ほど説明しますが、配偶者の課税価格が1.6億円以下であれば、全額を配偶者控除で差し引くことができるという制度になります。

計算例

子(一人分)の相続税額 5,080万円×9,000万円÷3億円=約1,700万円

ここでの計算のポイントは、やはり一度相続税額について、法定相続分を基準として個別に算出し、合計した後で、再度実際に相続する額に応じて相続税額を按分するというところではないでしょうか。

間違いやすい部分なので気を付けましょう。

国税OB岡本先生のOnePointアドバイス

日本の相続税額の計算は、「法定相続分課税方式」という方式を採用しており、亡くなられた方の総遺産額に応じて相続税総額を一度計算してから、実際の財産取得割合により各人の相続税額に按分するという特殊な方式になっています。

ですので、遺産総額がわかっていても、相続人の数がわからないと相続税額を計算できないですし、自身が受け取る遺産の総額だけがわかっても相続税額を計算することはできないのです。

よく「遺産〇〇円もらうんだけど相続税何円くらいかかりますか?」といったご相談がくるのですが、その情報だけでは相続税額を計算することはできません。

相続税計算、節税についての豆知識

さて、相続税計算については前の章で理解できたと思いますが、その他の注意点や、知っておくと得するような節税の話をここではしていきたいと思います。

相続税の計算がよくわからなければ早見表を利用する方法もある?!

実は、相続税の早見表というものが存在します。

この早見表を使えば、相続税の計算をする必要なく、ざっくりとした相続税の額を算出することができます。

相続人が配偶者と子供の場合

相続税早見表 子供の人数
1人 2人 3人 4人
遺産総額(基礎控除前) 5,000万円 40万円 10万円
6,000万円 90万円 60万円 30万円
7,000万円 160万円 113万円 80万円 50万円
8,000万円 235万円 175万円 137万円 100万円
9,000万円 310万円 240万円 200万円 163万円
1億円 385万円 315万円 262万円 225万円
1億5,000万円 920万円 748万円 665万円 588万円
2億円 1,670万円 1,350万円 1,217万円 1,125万円
2億5,000万円 2,460万円 1,985万円 1,800万円 1,688万円
3億円 3,460万円 2,860万円 2,540万円 2,350万円
3億5,000万円 4,460万円 3,735万円 3,290万円 3,100万円
4億円 5,460万円 4,610万円 4,155万円 3,850万円
4億5,000万円 6,480万円 5,493万円 5,030万円 4,600万円
5億円 7,605万円 6,555万円 5,962万円 5,500万円

相続人が子供だけの場合

相続税早見表 子供の人数
1人 2人 3人 4人
遺産総額(基礎控除前) 5,000万円 160万円 80万円 20万円
6,000万円 310万円 180万円 120万円 60万円
7,000万円 480万円 320万円 220万円 160万円
8,000万円 680万円 470万円 330万円 260万円
9,000万円 920万円 620万円 480万円 360万円
1億円 1,220万円 770万円 630万円 490万円
1億5,000万円 2,860万円 1,840万円 1,440万円 1,240万円
2億円 4,860万円 3,340万円 2,460万円 2,120万円
2億5,000万円 6,930万円 4,920万円 3,960万円 3,120万円
3億円 9,180万円 6,920万円 5,460万円 4,580万円
3億5,000万円 1億1,500万円 8,920万円 6,980万円 6,080万円
4億円 1億4,000万円 1億920万円 8,980万円 7,580万円
4億5,000万円 1億6,500万円 1億2,960万円 1億980万円 9,080万円
5億円 1億9,000万円 1億5,210万円 1億2,980万円 1億1,040万円

この早見表を用いれば、遺産総額に対して、全員で支払わなければならない相続税の総額が確認できるということを、まずは、理解しておきましょう。

しかし、この早見表を使える条件がありますので注意が必要です。

その条件とは以下です。

早見表が使える条件

  • 子供が存在する場合
  • 遺産増額の半分を配偶者に相続する場合(配偶者は法定相続分通りに相続させる場合)

まず、この相続税早見表は、子供がいる場合にのみ使えます。

したがって、子供が一切いない場合には使えないということに注意しましょう。

そして、もう一つ重要なことは、この早見表は法定相続分どおりに配偶者に遺産分割をした場合に利用できるという点です。

法定相続分とは、法律で定められた相続割合の基準のようなものと理解してもらえば結構です。

子どもがいる場合には、配偶者に半分を、子供全員合わせて半分を相続させるというのが法定相続分になっています。

したがって、例えば、子供3人いる場合には、配偶者半分、子供1/6ずつといった感じで法定相続分を計算することができます。

配偶者は法定相続分以下の相続に対してはそれにかかる相続税はゼロになるという配偶者控除の制度があります。

この配偶者控除の制度を利用した時の、相続税総額の早見表であることを理解しなければなりません。

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相続税の配偶者控除は節税効果が非常に高い

先ほども出てきましたが、この相続税の配偶者控除は非常に節税効果が高いものです。

また、1.6億円を超えていたとしても、法定相続分までであれば配偶者は全額を配偶者控除することができ、相続税が一切発生しないということも合わせて覚えておきましょう。

つまり、配偶者控除のおかげで、ほとんどのケースで配偶者は相続税を一切払わなくてよくなるといえます。

二次相続には注意

配偶者控除を使えば、ほとんどのケースで配偶者は相続税を支払わなくてよいということで、配偶者に沢山相続させてしまうというケースも考えられるかもしれませんが、そんな時に問題になるケースが、その配偶者が亡くなった時の相続(二次相続)です。

例えば、夫に1億円の財産があり、妻に2億円の財産があるような場合で、夫が亡くなったとしたら、法定相続分を考えると、子供に5,000万円、妻に5,000万円の相続が発生することになります。

妻の5,000万円は配偶者控除により実質相続税がかかりませんが、気を付けたいのは、妻はこれにより2億5,000万円の財産に増えるということです。

この妻が亡くなった時には、この2億5,000万円を遺産として子に相続されてしまうことになります。

これは相当な税負担になってしまいます。

したがって、二次相続も考えた上で、できる限り、一次相続の段階で子にも相続させておいた方が有利になる可能性があるということです。

また、妻の方がどれくらい生きているかわからないということもあるので、妻にもある程度財産を持ってもらいたいということもあります。

なので、一般的には、法定相続分で一次相続をした後、二次相続に備えて、例えば月310万円ずつ子に贈与をしておき、相続税が多額に発生しないように、相続対策をしておくなどという方法(贈与税の税率が10%で収まる範囲内で贈与しておく方法)がよくとられます。

実際には、相続人の間で感情が働くため、贈与は思ったようには動かないというのがよくあるケースなので、十分に親族間で話し合いをしておくことが実務上重要になってきます。

相続税対策として生前贈与が有効になるケースも?

相続税の節税の第一歩はなんといっても、将来支払う相続税がどれくらいになりそうなのかを事前に知ることにあります。

相続税は基礎控除を超えた分に対しては、金額が大きくなればなるほど多額の税金が発生するという累進課税制度を採用しています。

参考:国税庁HP 相続税の税率

一方で贈与税も、相続税と同じように基礎控除が110万円を超えた分に対して、以下のような税率で税金が発生する仕組みになっています。

こちらも、金額が大きくなればなるほど税率が上がる累進課税制度が採用されています。

一般贈与財産の場合

贈与税の課税価格表

特例贈与財産の場合

特例贈与財産の場合

ちなみに、一般贈与財産の場合の速算表は、例えば、兄弟間の贈与、夫婦間の贈与、親から子への贈与で子が未成年者の場合などに使用します。

また、特例贈与財産の場合の速算表は、直系尊属(祖父母や父母など)から、その年の1月1日において20歳以上の者(子・孫など)※への贈与税の計算に使用します。

参考:国税庁HP

相続税と贈与税の税率を見ればなんとなく節税方法がわかってきたのではないでしょうか。

例えば、相続が相当多額に発生することがわかっている場合には、贈与税を支払ってでもいいので、こつこつ、被相続人となる人の財産を生前に贈与しておいた方が得になるケースがあるということです。

相続税シミュレーションのようなツールを利用して相続税の金額を算出するのもあり

相続税シミュレーションのようなツールをサイトで公開しているようなものもあります。

相続税の計算がどうしてもわからないという場合はシミュレーションを使ってもよいかもしれません。

ただし、後で説明しますが、遺産総額の計算など、シミュレーションだけでは決して見抜けないような落とし穴が相続税の計算には隠されています。

素直に税理士などに相談した方が安心だということはお伝えしておきます。

遺産総額の計算には注意?!相続財産の範囲とは?

遺産総額は相続財産の総額にあたりますが、相続財産は、預貯金や不動産だけだと思っていませんか?

相続税の計算に含める相続財産には、不動産や預貯金以外にも手持現金や株式、ゴルフ会員権、車や貴金属のほか、法律上は相続財産とはならない生命保険金や3年以内に贈与を受けた財産なども含まれます。

また、逆に借入金などのマイナスの財産も存在します。

さらには、死亡保険金や死亡退職金というみなし相続財産と呼ばれるものや3年以内に贈与された財産、相続時精算課税制度で贈与された財産なども相続財産に含まれます。

これらを合計した金額が遺産総額になるということに注意してください。

限界税率と実効税率という考え方を理解する

相続税の税率は、何度も説明しているように法定相続分ごとの累進課税を計算して、最終的にその相続税を合算するという複雑な仕組みとなっています。

そこで、よく出てくる言葉が「限界税率」と「実効税率」です。

具体例でみてみます。

遺産総額3億円、配偶者と子ども3人が存在する場合を先ほど説明しました。

計算例

  • 基礎控除の額

基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 4人(法定相続人の数) =5,400万円

  • 課税総額の計算

課税総額 = 3億円(遺産総額) ― 5,400万円(基礎控除) = 2億4,600万円

  • 相続税総額の計算

A法定相続分の計算

配偶者の法定相続分 = 2億4,600万円 × 1/2 = 1億2,300万円

子の法定相続分 = 2億4,600万円 × 1/6 = 4,100万円

B相続税総額の計算(まずは個別に相続税額を計算しそれを合算します)

配偶者の相続税額

1億2,300万円 × 40%(税率) ― 1,700万円 =3,220万円

子一人分の相続税額

4,100万円 × 20%(税率) - 200万円 = 620万円

参考:国税庁HP 相続税の税率

C相続税総額

3,220万円 + 620万円 × 3人 = 5,080万円

ここでいう限界税率は、③のBででてくる、40%と20%です。

一方で実効税率とは、5,080万円÷3億円=16.9%です。

実際に、遺産総額に対してどれくらいの率が相続税として納めなければならないのかが実効税率と覚えておくとよいでしょう。

この実効税率の考え方をうまく利用すれば、生前贈与でいくらまで贈与税を許容してでもいいから贈与しておくべきかなどを計算することも簡単になります。

税額控除や2割加算について

基礎控除はそもそも遺産総額から差し引くことができる控除になります。

また配偶者控除というのは税額から直接差し引くことができる控除です。

実は配偶者控除以外にも税額から直接差し引くことができる控除があります。

また、一親等以外の者に相続させる場合には2割加算という制度もあります。

こちらについて説明していきます。

未成年者控除

未成年者控除とは、相続人が未成年者である場合、税額控除を受けられるという制度です。

控除の額は、「(20歳―相続時の年齢)×10万円」で算出されます。

障害者控除

相続人が85歳未満の障害者の場合に税額控除を受けることができる制度です。

障害者控除の額は、「(85歳―相続時の年齢)×10万円」

ちなみに、この10万円という額は一般障害者の場合であり、特別障害者はこの10万円が20万円となります。

相次相続控除

相続が発生してから10年以内に相続が発生した場合に、一定の金額を控除することができる制度を相次相続控除と言います。

相次相続控除の計算式は少し複雑です。

相次相続控除額の計算式

A×C÷(B-A)×D÷C×(10-E)÷10=相次相続控除額

A:二次相続の被相続人が一次相続で課された相続税額

B:二次相続の被相続人が一次相続で取得した財産額

C:二次相続の相続財産の合計額

D:相次相続控除を受ける相続人が二次相続で取得する財産額

E:一次相続から二次相続までの期間(1年未満は切り捨て)

ただし、B-AよりもCの方が大きい場合、Cの値はB-Aとなります。

贈与税額控除

相続により財産を取得した人が、亡くなる3年前以内に被相続人から贈与を受けていた場合に、その贈与額を相続税の課税価格に加算して、相続税額を計算することになります。

しかし、これで計算した相続税額をそのまま支払ってしまうと、相続税と贈与税が二重にとられてしまうので、相続税額から贈与時に支払った贈与税を差し引くことができます。

これを贈与税額控除とよびます。

相続時精算課税制度による贈与の税額控除

相続時精算課税制度とは、親などが子供などに対して財産を贈与する際に2,500万円までは無税で贈与できるという制度です。

この制度を利用しても、2,500万円を超えた分については贈与税が発生します。

この贈与税についても、贈与税額控除と同様に相続税額から差し引くことができるという制度が「相続時精算課税制度による贈与の税額控除」になります。

ちなみに、相続時精算課税制度は一般的には節税効果はないと言われており、あまり利用している人がいないのが現状です。

国税OB岡本先生のOnePointアドバイス

相続時精算課税制度を適用して贈与を受けた場合は将来的に相続財産に加算して計算しなければならず、制度適用後は110万円の基礎控除は適用できなくなるので一般的に節税効果が少ないのは確かです。

また、小規模宅地等の特例は相続時精算課税では使えませんので、相続まで待った方が有利になるケースもあります。

ただし将来値上がりが予想される財産及び賃貸不動や株式など収益を生む財産の場合は節税になる場合もあります。また生前の意思による分割の前倒しにもなりますので家族構成や財産内容次第でご検討するのが良いと思います。

外国税額控除

国外にある財産を相続により取得した場合は、外国でも相続税のような税金を支払う可能性があります。

すでに外国で相続税のような税金を支払っている場合には、相続税から一定の金額を差し引くことができるという制度が外国税額控除になります。

一親等の親族以外には、2割加算

実は、親、子、配偶者、代襲相続した孫など以外は、2割加算されてしまうという制度がありますので注意しましょう。

簡単にいうと支払う相続税の計算上、最終的に2割加算されてしまうというイメージです。

相続税の税率についての豆知識

そもそも相続税の税率はどのような歴史をたどってきたのでしょう。

また諸外国と比べて日本の相続税の税率はどのようになっているのでしょうか。

相続税の税率は、ここ数年は上昇傾向

相続税の税率は、平成14年までは、マックス70%という恐ろしいまでに高い限界税率となっていました。

しかし、平成15年からは、3億円を超える部分に対して50%ということで、マックスの税率が50%まで下がりました。

しかしその後、平成27年から現在(令和3年3月)までは、6億円を超える部分に55%と若干税率が上がってきている傾向にあります。

相続税の税率は国ごとにバラバラ

次に、相続税の税率を国ごとにみていくとこちらも面白いほど色々なパターンがあります。

例えばアメリカは、12億円を超えるような超富裕層しか相続税は発生しません。

また、イギリスについては、一律40%ということで、日本のような累進課税制度が採用されていません。

相続税で悩んだら税理士へ

相続税で悩んだら税理士に相談すべきです。その理由を解説します。

相続税評価額の計算は得意な税理士に任せるべき

実は、相続税の計算において、まず悩むのが遺産総額です。

遺産の中でも、不動産の相続税評価額には特に注意が必要です。

不動産の相続税評価額の計算は実は、様々な方法や特例があり、それらを組み合わせることで、相続税評価額を大きく下げられる可能性があるケースが多々あります。

この相続税評価額の計算が得意な税理士に依頼するのが非常に重要です。

相続税評価額の算定のタイミングこそが最も税理士に依頼することで節税につながる可能性が高くなるタイミングといえると思います。

国税OB岡本先生のOnePointアドバイス

相続税評価額は固定資産税評価額とは違います。

「不動産の相続税評価額=固定資産税評価額」と勘違いしている方が多くいらっしゃいますので注意してください。

一概には言えませんが、相続税評価額の方が固定資産税評価額より高くなってしまうケースが多いですので、固定資産税評価額を見て、基礎控除以内に収まっているから相続税は発生しないと安易に考えないようにしてください。

相続税申告書の作成も税理士に依頼すべき

相続税の申告については約8割の人が税理士に依頼しているという実態がありますので、税理士に依頼しない方は少数派ということも理解しておく必要があります。

さらには、相続税申告者のうち約2割の人に税務調査が入っているという実態もあなどれません。

相続税で失敗しないためにも、税理士への相談は躊躇なくすべきと言えると思います。

よく、税務署に何度も通って職員に聞きながら相続税申告書を作成する方がいらっしゃいますが、正直おすすめできません。

また、そもそも相続税の申告は短時間の相談で作成できるものではありません

まとめ

いかがでしたでしょうか。

相続税の税率の使い方や相続税の計算方法を理解しておき、相続税申告や相続税対策に役立てましょう。

  • この記事を書いた人
篠 昌義(公認会計士/税理士)

篠 昌義(公認会計士/税理士)

株式会社相談室代表取締役。有限責任監査法人トーマツで大企業から中小企業までの監査やコンサルティング、税理士法人で大企業の法人税から個人の所得税まで幅広く実務を担当したのち、自身も経営者としてシェアリングテクノロジー株式会社(東マ:3989)の取締役CFOから代表取締役まで幅広く経験。東証マザーズ上場の責任者を務めるだけでなく、上場後の事業推進、資金調達、M&A、組織改革などを幅広く企業拡大を牽引。 詳しい経歴・プロフィールは当メディアの運営者情報をご覧ください。

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