相続

【弁護士監修】自筆証書遺言作成のポイントや出てきた時の対処方法とは?!

遺言書には種類がありますが、自分1人で作成できる遺言は、自筆証書遺言です。

公証役場等に行く必要もないので、簡易に作成することができます。

もっとも、法定の方式があり、これに反すると無効となりますので注意が必要です。

今回は、自筆証書遺言を作成する際のポイントや、注意事項について、詳しく説明します。

目次

自筆証書遺言ってそもそも何?!

そもそも、自筆証書遺言とは、何でしょうか。

自筆証書遺言の内容、他の遺言との違いについて、説明します。

そもそも遺言書ってなんで必要なの?

例えば、あなたには相続人として妻、長男、長女がいます。

あなたの遺産は、現在も妻が居住している自宅の土地建物だけです。

あなたは、自宅の土地建物を妻に相続して欲しいと考えています。

このような場合、遺言書がなければ、遺産分割協議をすることになります。遺産分割協議の際、法定相続分で分けることが一般的ですので、自宅の土地建物を妻が2分の1,長男及び長女が4分の1ずつで相続することになります。

しかし、遺言書を作成すれば、妻に土地建物をすべて相続させることができます。

このように遺言書によって、法定相続分に限られず、遺言者の意思通りに財産を分けることができます。

ちなみに、遺言書には、自筆証書遺言のほかに、公正証書遺言と秘密証書遺言があります。

自筆証書遺言は遺言者本人が自筆で作成する遺言書

自筆証書遺言は、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押したものになります(民法968条1項)。

もっとも、民法改正により、自筆証書に一体のものとして、相続財産の全部又は一部の目録を添付する場合、その目録については自書する必要はありません(民法968条2項前段)。

公正証書遺言や秘密証書遺言との違いとは?!

公正証書遺言は、遺言者が、公証人に遺言内容を口授して、公証人がこれを筆記して公正証書にしたものになります(民法969条)。

秘密証書遺言は、遺言者が、遺言書を作成して、これを封印し、この封印した遺言書を公証人1人及び証人2人以上に提出して、自己の遺言書であること並びに遺言者の氏名及び住所を申述するものになります(民法970条)。

自筆証書遺言と公正証書遺言の違いは、作成者になります。

自筆証書遺言では、遺言者本人が作成するのに対し、公正証書遺言では、公証人が作成します。

自筆証書遺言と秘密証書遺言は、いずれも遺言者が遺言書を作成します。

しかし、自筆証書遺言はこれで完成するのに対し、秘密証書遺言は、公証人が関与して完成させるものになります。

自筆証書遺言作成のメリット①費用がかからず、自身で作れること

自筆証書遺言は、公正証書遺言と異なり、費用がかかりません。

また、遺言者自身ですぐに作成することができます。

そのため、費用がかからず、自身で作れるため、簡便です。

自筆証書遺言作成のメリット②遺言書の内容をいつでも修正でき、遺言書の存在や内容を秘密にできる

 自筆証書遺言は、遺言者が自分で作成することができるものです。

そのため、遺言者は、遺言書の内容を変更したい場合、自由に修正することができます。

また、遺言者自身で遺言書を作成することができるので、遺言書の存在や内容を秘密にすることができます。

自筆証書遺言作成のデメリット①間違えると遺言自体が無効になるなど、自身でつくるのが難しいこと

遺言書は、遺言者の死亡後に効力が生じます。

効力発生時期には、遺言者がいないため、遺言書は、遺言者の真の意思に基づくことを担保しなければなりません。

そのため、遺言書は、法定の方式にしたがって作成することを求めています。

この法定の方式に従っていない場合、遺言書は無効になります。

遺言者は、遺言書の作成に精通しているわけではないため、方式を具備するように作成するのは大変です。

自筆証書遺言作成のデメリット②他人の改ざんや、紛失や誰も気づかないの可能性がある

自筆証書遺言は、遺言者だけで作成し、遺言者自身で保管していることがあります。

遺言者以外の者が遺言書を見つけた場合、遺言書の内容を改ざんすることができてしまいます。

また、遺言者が保管していた場合、紛失してしまうことがあります。

遺言者が死亡した後、相続人らは、遺言書に気づかずに、遺産分割をしてしまうこともあります。

なお、2019年7月より法務局で遺言書の保管制度が開始したため、同制度を利用することで、改ざん、紛失、相続人が気づかないというリスクを減らすことができます。

自筆証書遺言作成のデメリット③検認手続きが必要である

自筆証書遺言では、検認手続が必要になります。

検認手続は、遺言書の保管者又は発見者が、家庭裁判所に対し申立てを行います(民法1004条1項)。

遺言者は、相続人らに手続をさせる負担を負わせることになります。

財産目録はパソコンで作成してもよくなった(2019年1月改正自筆証書遺言の方式緩和)

自筆証書遺言については、①遺言事項と②財産目録にわけたうえで、前者では自書が必要になるものの、後者はパソコンで作成することが認められました。

パソコンで作成する場合、財産目録の各ページに署名・捺印をしなければなりません(民法968条2項)。

自筆証書遺言の法務局での保管制度が2020年7月改正で新たに

自筆証書遺言は、紛失、改ざん、相続人が気づかないことも遺産分割をしてしまう危険性があります。

そこで、2020年7月より、法務局での自筆証書遺言の保管制度が創設されました。

この手続きを使用すれば、裁判所の検認手続が不要になります。

遺言者が亡くなった後、法務局で検索をかけると保管している遺言書が見れる

相続人は、被相続人の遺言書が遺言書保管所に保管されているか否かを照会するとともに、保管されている場会、遺言書保管ファイルに記録されている事項を証明した書面の交付請求をすることができます。

これにより、相続人は、遺言書の有無を検索することで、被相続人の遺産分割協議をする前に、遺言書の有無を確認することができます。

自筆証書遺言の書き方とは?!5つの要件が重要なポイントに

自筆証書遺言は、法定の方式にしたがって作成しなければ、無効になってしまいます。

では、遺言書をどのような方式で作成すればよいのか、解説します。

(遺言書のフォーマットを画像ではる)

遺言書

遺言者●は、次のとおり遺言する。

1 遺言者は、次の不動産を妻●に相続させる。

(1)土地

所在 ●

地番 ●

地目 ●

地積 ●㎡

(2)建物

所在 ●

家屋番号 ●

種類 ●

構造 ●

床面積 ●

 

2 遺言者は、次の銀行預金を子●に相続させる。

(1)●銀行●支店 口座番号●

(2)●銀行●支店 口座番号●

 

3 遺言執行者を妻●と指定する。

 

令和●年●月●日

(住所)

(署名)(押印)

遺言の方法には特定遺贈と包括遺贈の2種類が存在する

遺言の方法は、特定遺贈と包括遺贈の2種類があります。

特定遺贈とは、被相続人の特定の財産を遺贈するものになります。

例えば、「土地をAに相続させる」「500万円をBに相続させる」というものです。

包括遺贈とは、遺言者が財産の全部又は一部を一定の割合で示された部分の遺産を受遺者に与えるものです。

例えば、「財産を全てCに相続させる」「Dに対して遺産の4分1を相続させる」というものです。

自筆証書遺言に必要なポイント①遺言者本人が自筆で書く

自筆証書遺言は、遺言者が全文、氏名、日付をすべて自書しなければなりません。

遺言書は、遺言者の真意に基づいて作成されることが必要です。

遺言書の作成にあたり、遺言者が自書することで、筆跡から遺言者本人が作成したことが分かり、遺言者の真意に基づいて作成されたことが担保されます。

自筆証書遺言に必要なポイント②日付を書く

自費証書遺言では、遺言者が日付を自書しなければなりません。

自筆証書遺言は、遺言者が修正することも、作成しなおすことも比較的容易にできます。

そのため、複数の遺言書が作成されることがありますので、日付により先後関係を明らかにする必要があります。

自筆証書遺言に必要なポイント③署名をする

自筆証書遺言では、遺言者が氏名を自書しなければなりません。

氏名が書いてなければ、誰の遺言書かは明らかではありません。

したがって、遺言者を明確にする必要があるので、自署が求められています。

自筆証書遺言に必要なポイント④(実印で)印する

遺言者が誰かを明確にするため、氏名だけではなく、押印も必要です。

日本では、重要な文書では署名・押印することで完成としていました。

このような慣習から、押印は、遺言書の全文、署名をあいまって、遺言書が遺言者によって作成されたことを担保することになります。

自筆証書遺言に必要なポイント⑤加除や変更は慎重に

自筆証書遺言は、遺言者自身で作成することができるため、加除や変更が容易にできます。

しかし、遺言書の加除や変更する箇所が不明確になれば、遺言者の真意が分からなくなってしまいます。

そのため、加除や変更する場合、遺言者が当該場所を指示し、これを変更した旨付記して特にこれを署名し、その変更場所に印を押さなければ効力が生じません(民法968条3項)。

ですので、加除や変更も法定の方式に従って、行わなければなりません。

財産を把握するために登記簿などの各種資料を集める必要がある

遺言書は、遺言者が自身の財産をどのように分けるのを意思表示することが多くあります。

遺言者の財産を分ける前提として、遺言者は、自身にどのような財産があるかを把握しなければなりません。

特に、特定遺贈の方法にする場合、遺贈する財産が明らかにすることになります。

そのため、遺言者は、自身の財産を確認する必要があります。

法定相続人が誰なのかを調べるために、相続関係説明図を作る必要がある

法定相続人が誰かを調べるためには、亡くなった者の戸籍(除籍、原戸籍)謄本を収集して、子がいるか、両親は健在か、兄弟姉妹がいるか等を調査することになります。

遺言者も自身の相続人を確認するのであれば、自身の戸籍(除籍、原戸籍)謄本を収集して、相続関係説明図を作成するのがよいでしょう。

自筆証書遺言を作成、保管、執行する上での注意点とは?!

遺言者が遺言書を作成、保管するうえで、どのような事に注意する必要があるか、また、遺言者が亡くなった後、遺言書を執行するうえで注意すべきことは何かを解説します。

遺言書は下書き必須?!

遺言書は、書き間違えても変更することができます。

しかし、修正する際には、当該場所を指示し、これを変更した旨付記して特にこれを署名し、その変更場所に印を押さなければ効力が生じません(民法968条3項)。

遺言書の加除や変更する箇所が不明確になれば、遺言者の真意が分からなくなってしまい、遺言書が無効になってしまうこともあります。

ですので、書き間違えることは、望ましくありません。

遺言書を作成する際には、下書きをして書き間違えないようにすることが大切です。

自筆でないと遺言書自体が無効になる?!

自筆証書遺言では、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書しなければなりません(民法968条1項)。

これは、遺言書は、遺言者の真意に基づいて作成されることが必要だからです。

遺言書の作成にあたり、遺言者が自書することで、筆跡から遺言者本人が作成したことが分かり、遺言者の真意に基づいて作成されたことが担保されます。

代筆を認めてしまえば、本当に遺言者の意思なのか否か、判断することができなくなってしまいます。

ですので、自筆証書遺言では、遺言者が自筆で作成しなければなりません。

当たり前だが、鉛筆やシャープペンシルで書いてはダメ

民法は、遺言書を作成する際に使用する筆記用具を定めていません。

ですので、遺言書を鉛筆やシャープペンシルで書いても、遺言書は有効です。

しかし、鉛筆やシャープペンシルで作成すれば、消すことができます。

ですので、第三者が遺言書を見つけて、書き直すことも簡単にできてしまいます。

改ざんされることを避けるために、鉛筆やシャープペンシルで作成するのは、望ましくありません。

消すことができないボールペン等を使用しましょう。

用紙はA4サイズにする

遺言書を作成する用紙に制限はありません。

どのような書類に書いても問題はありません。

もっとも、法務局の自筆証書遺言の保管制度では、使用する用紙をA4としています。

ですので、同制度を利用する可能性があるのであれば、A4で作成するのが良いでしょう。

2人以上で作成したものは無効

遺言は、2人以上の者が同一の証書ですることができません(民法975条)。

これは、夫婦で共有している財産で、配偶者の了承を得て、子どもに相続させるというようなケースで誤って書かれることがあります。

このような場合も、共同する必要はなく、夫の遺言書で自身の持分を子どもに、妻も妻の遺言書で子どもに相続させれば足ります。

作成時点で認知症と診断されていれば無効

遺言書は、遺言者の意思通りに財産を分けることができます。

しかし、遺言書作成時に、遺言者に遺言能力がない場合、その意思を尊重する必要はありません。

ですので、遺言書を作成する際に認知症等により遺言能力がない場合、遺言者が作成した遺言書は無効になります(民法3条の2)。

遺言書が複数見つかった場合、古いものは無効

自筆証書遺言は、作成が容易であることから、複数作成されていることがあります。

このような場合、作成日付が新しいものが有効になります。

そして、作成日付が古い遺言書は、新しい遺言書と抵触する限りで、無効になります。

封印し、適切な保管を忘れずに!

作成した遺言書が紛失しないよう、封印して適切な場所に保管をしましょう。

昔は、住んでいる家の金庫等に保管されるなどしていましたが、相続人らが見つけることができる場所で保管をしましょう。

自筆証書遺言は、相続人が見つけることができないままになってしまう可能性があるので、気をつける必要があります。

「相続」と「遺贈」の使い分けに注意

相続は、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するものです(民法896条)。

遺言がなければ相続人は、法定相続分に従って、財産も負債もすべて承継することになります。

遺贈は、無償で被相続人から財産を譲り受けることです。

遺言がある場合、相続人以外の者も譲り受けることができます。

対象の相続財産について曖昧な特定方法をしないことが重要?!

遺言書は、遺言書に記載されたとおりに財産を分けることになります。

記載された内容が曖昧であれば、どの相続人がどのように財産を相続するのか分かりません。

遺言者は、自身の意思通りに相続人に財産を譲り渡したいのであれば、どの相続人に、どの相続財産を渡すのかが明らかになるように形で記載する必要があります。

自宅という表記は不明確なのでダメ!!

遺言書では、「自宅」という表記では、どの土地建物かは明確になっていません。

遺言者にとって、「自宅」という表記で十分特定できていると思うかもしれませんが、遺言書としては不十分です。

自宅だけでは、どの土地建物かが明らかではないからです。

住所での記載だけでなく地番や家屋番号も必要?!

遺言者が土地建物を遺贈する際、住所だけでは不十分です。

土地建物には、それぞれ登記されています。

ですので、土地建物を取得させる際には、土地であれば「所在」「地番」「地目」「地積」、建物であれば「所在」「家屋番号」「種類」「構造」「床面積」等の、登記に記載されている情報で、対象の土地建物を明確にしなければなりません。

預貯金を相続させる場合には必ず口座番号も記載する

預貯金を相続させる際には、銀行名、支店名、口座番号まで記載する必要があります。

遺言者は、同じ銀行の同じ視点に複数口座を持っていることもあります。

ですので、遺贈させる財産を特定するため、口座番号を記載して対象の預貯金を明確にしなければなりません。

単純に「〇〇と〇〇で分けて」などと具体的な分け方を記載しないのはNG

遺言書は、相続分の指定、遺産分割方法の指定などをすることができます。

しかし、例えば、〇〇と○○で分けてというような具体的な分け方を指定しない遺言書を作成することはできません。

ですので、遺言書を作成するにあたっては、誰にどの財産をどのように相続させるか明確にする必要があります。

自宅などで保管する場合には、保管場所を必ず誰かに知らせておく

自筆証書遺言は、公正証書遺言と異なり、遺言者が自宅で保管していることがあります。

そして、遺言者は、保管場所を知らせておかなければ、相続人が気づかないおそれがあります。

そうなると、相続人は、遺言書によらずに、遺産分割をすることになります。

ですので、自筆証書遺言を作成した際には、遺言書は、保管場所を伝えておくのが良いでしょう。

なお,2019年7月から自筆証書遺言の保管制度が新設されました。

この制度は、遺言者が法務局に行き、遺言書の保管を申請することができます。

これにより、遺言者以外の者は、遺言者の死亡後、遺言書を保管しているかどうか確認することができます。

家庭裁判所での検認手続きを忘れずに

遺言書の保管又は発見した者は、遺言書の死亡を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して、その検認の請求をしなければなりません(民法1004条)。

これは、遺言書の変造、隠匿を防止するため、遺言書の原状を確認するためのものです。

相続開始時までに財産がなくなった場合には、その部分が無効に

遺言書は、遺言者が亡くなる前に作成するものになります。

ですので、遺言者が遺言書を作成した後、亡くなるまでに財産がなくなることがあります。

このような場合、なくなった財産に関する部分は無効になります。

遺留分がある場合、必ずしも遺言通りに分配されないので注意

相続人は、一定割合の財産の相続権を保障する制度です。

これは、遺言者の意思によっても、奪うことができません。

ですので、遺言者が特定の相続人(=受遺者)にすべての財産を相続させようとしても、遺留分だけは受遺者以外の相続人は取得することができます。

付言事項に法的効力はないが納得感があるため記載するのがおすすめ

遺言書で相続の割合を法定相続分から変更した場合、遺留分減殺請求をしないよう求めた場合などには、付言事項にその理由を書いたり、家族への言葉を書いたりするのが効果的です。

付言事項は、法的拘束力を有するものではありません。

しかし、遺言書を作成した理由や家族へのメッセージを残すことで、相続人の理解を得られる可能性もあります。

意外と忘れがちなのが相続税。遺言書次第でのちのちの負担が大きく変わることに

遺言書がある場合、遺言書に記載された内容を実現させることができます。

これは、法定相続分ではなく、遺言者の意思通りに相続させることができます。

もっとも、相続させる財産が高額になれば、相続税も考慮しなければなりません。

相続人の1人のみ財産を渡しても、その相続人が多額の相続税を負担することになりかねませんので、相続税も踏まえて遺言書を作成する必要があります。

二次相続にも十分配慮して分配する財産を決定しよう

例えば、あなたには相続人として妻、長男、長女がいます。

あなたの財産は、自宅である土地建物(2億円)、預貯金1億円です。

あなたが亡くなった場合にそなえ遺言書を作成する場合、相続税を減らすため、妻に多くの財産を渡すことを考えると思います。

相続税には配偶者控除があり、法定相続分又は1億6000万円までは相続税が課税されないからです。

しかし、今回あなたの相続で相続税を減税したとしても、妻の相続の際、妻に多くの財産があれば、妻の相続で高額の相続税が課される可能性があります。

相続税が課される可能性がある場合、あなたの相続(これを一次相続といいます。)だけではなく、妻の相続(これを二次相続といいます。)も踏まえ、遺言書を作成するのが望ましいでしょう。

不備ゼロはなかなか難しいので、公正証書遺言にしておくのが無難?!

自筆証書遺言は、費用が安く、変更も容易であり、作成しやすいものです。

しかし、自筆証書遺言は、遺言者が作成するものですので、法定の方式に沿っていないものが見受けられます。

そうなれば、遺言書を作成しても無効になってしまい、遺言者の意思どおりに財産を分けることができなくなります。

そのため、遺言書のとおりに財産を相続させたいと考えているのであれば、公正証書遺言がお勧めです。

公証役場であれば、専門家である公証人が、民法の要件・方式に基づいて作成します(民法969条1号~5号)。

ですので、方式を誤ることもなく、遺言書を作成してもらえます。

遺言できる内容には具体的に何がある?!

遺言書では、どのようなことを決めることができるのか解説します。

子の認知

婚姻していない女性との間のできた子について,遺言で認知することができます(民法781条2項)。

後見人の指定

被相続人が未成年の子を残していた場合、後見人を指定することができます(民法839条1項)

遺贈(相続人以外の受遺者への遺贈も含む)

被相続人は、遺言書を作成することにより、法定相続分ではなく、遺言者の意思通りに相続をさせることができます。

被相続人は、遺言書により、法定相続人以外の第三者にも財産的利益を与えることができます。

寄付

被相続人は、遺言により、第三者にも財産的利益を与えることができます。

被相続人が団体に寄付を希望する場合、遺言による実現することができます。

相続財産の処分

遺言者は、自身の財産を相続人に与えたり、団体に寄付したり、自由に処分することができます。

相続の廃除、廃除の取消

相続の廃除とは、被相続人が、相続欠格事由ほど重大な非行ではないが、自己の財産を相続させるのが妥当ではないと思われるような非行や被相続人に対する虐待・侮辱がある場合に、その相続人の相続資格を剥奪する制度である。

被相続人は、遺言により、廃除を申し立てることができます。

また、反対に、たとえ廃除が確定しても、被相続人は家庭裁判所に廃除の取り消しを求めることができます(民法894条1項)

相続分の指定、指定の委託

被相続人は、相続分を指定することもできます(民法902条)。

例えば、配偶者に4分の3,長男に4分の1と決めることができます。

また、被相続人は、相続分の指定を第三者に委託することもできます。

遺産分割の禁止(一定期間)

遺言者は、相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁止することができます(民法908条)

遺産分割方法の指定、指定の委託

被相続人は、相続人の誰にどの財産を相続させるかを指定することができます(民法908条)。

例えば、配偶者に自宅の土地建物を相続させると決めることができます。

また、被相続人は、遺産分割の方法を第三者に委託することもできます。

遺言執行者の指定、指定の委託

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する者です。

遺言者は、遺言において、遺言執行者を指定することができます。

また、遺言者は、遺言において、遺言執行者の指定を、第三者に委託することもできます。

相続人相互の担保責任

各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任をおいます(民法911条)。

これは、共同相続人間で遺産分割をした際に、不適合のある財産を取得した相続人とそうでない相続人との公平を図るための規定です。

例えば、あなたの相続人として、長男及び長女の2人で、両名で遺産分割した結果、長男が不動産(1000万円),長女が預貯金(1000万円)を相続することにしました。

しかし、長男の取得した不動産の一部が第三者のものであり、取得した不動産が500万円の価値しかありませんでした。

このような場合、500万円を長男及び長女で負担します。今回は、長女が長男に対し250万円を支払います。

特別受益の持ち戻し計算免除

遺言では、特別受益の持ち戻し計算を免除の意思表示をすることもできます。

遺言者が、長男に対し、300万円を贈与しました。

遺言者は、長男に対し、相続とは別にこの300万円を余分に渡したいと考えていました。

このような場合、原則として、300万円を加えたものを相続財産とみなして、相続分を計算した後、長男は、すでに取得した300万円を控除して、具体的な相続分を算定します。

しかし、遺言者が、遺言で300万円の持ち戻し計算を免除する旨意思表示した場合、300万円を加えません。

生命保険金の受取人変更

遺言者は、生前に契約した生命保険の受取人を変更することができます。

遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)があった場合の、減殺方法の指定

改正前の民法では、遺留分減殺請求により、「贈与又は遺贈は遺留分を侵害する限度において失効し、受遺者又は受贈者が取得した権利は右の限度で当然に遺留分権利者に帰属する」としていました(最判昭和57年3月4日民集36巻3号241頁)。

そのため、遺言者は、遺留減殺の方法として、「1有価証券、2預貯金、3不動産」の順に減殺するなどと指定することができました。

もっとも、改正により、遺留分権利者は、遺留分侵害額請求権の効果として金銭債権が発生するものとしていますので、減殺方法の指定は必要なくなったと考えられます。

祭祀承継者の指定(年忌法要等の主催やお墓の管理など)

遺言者は、遺言で祭祀承継者を指定することができます。

祭祀承継者は、墓地・仏具・位牌等に関する権利を取得します。

また、遺言者の年忌法要等を主宰することができます。

遺言の書き方や相続に関して悩みがあれば専門家へ相談

遺言書の書き方や相続に関して悩みや分からないことがあれば、専門家に相談しましょう。

専門家に相談すれば、的確なアドバイスを受けることができます。

遺言が無効になるリスクを避けるには専門家へ相談するのが一番

自筆証書遺言では、法定の方式にしたがって作成しなければ無効になってしまいます。

ですので、自筆証書遺言を作成するにあたり、悩みや分からないことがあれば専門家に相談するのが良いでしょう。

専門家に遺言執行者を任せられる点も非常に重要

遺言書記載の内容を実現するために、遺言執行者を指定することができます。

専門家が遺言執行者になれば、遺言者の死亡後、速やかに手続を進めることができます。

遺留分がどれだけあるのかなどにも配慮して遺言を書くことができる

兄弟姉妹を除く法定相続人には、遺留分が認められています。

遺留分とは、一定の範囲の相続人に対して、一定割合の財産の相続権を保障するものです。

遺言書を作成するにあたっては、相続人の遺留分を侵害するような遺言書を作成すれば、遺言者の死亡後に、受遺者と他の相続人の間で争いになる可能性があります。

弁護士等の専門家は、遺留分も考慮して、どのような遺言書を作成すればよいのか、アドバイスをすることができます。

争いに関することや相続全般に関することは弁護士に相談

相続人間で争いがある場合や相続に関し分からないことがあれば、弁護士に相談をしましょう。

弁護士は法の専門家であり、法律全般につき相談を受けることができます。

相続税申告に関することは税理士に相談

相続税の申告に関する相談であれば、税理士に相談をしましょう。

税理士は税金に関する専門家であり、相続税に関する相談を受けることができます。

また、相続税の申告の際に、各種の控除や特例を用いることができる可能性もあります。

不動産の相続がある場合は司法書士に相談するのも手

相続人間で争いがない場合で、遺産の中に不動産がある場合、司法書士に相談をするのもよいでしょう。

遺産の中に不動産がある場合、相続登記をすることになります。

ですので、登記を取り扱っている司法書士に相談をすれば、不動産も含めて相続手続を進めることができます。

遺言書など簡単な書類作成であれば行政書士に依頼するのも手

遺言書等の簡単な書類の作成であれば、行政書士に相談するのも良いでしょう。

行政書士は、弁護士や司法書士と比べて、費用が安くなります。

ですので、簡単な書類の作成等を行政書士に依頼すれば、遺言書の作成や相続手続を進めてもらえます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。自筆証書遺言は作るだけであれば、簡単である反面、不備があれば無効になるなど、難しい側面ももちあわせています。

自筆証書遺言を作成する場合には十分に注意しましょう。

監修者情報

愛知孝介先生

日本弁護士連合会所属 弁護士登録番号54061号

弁護士登録後、大手法律事務所に入所。

相続案件を中心に、年間100件以上の法律相談を受け、解決策を提案する。相続案件にあたっては、税理士、司法書士、宅建士等の他士業と連携のうえ、数多くの案件を解決に導く。

事業承継プランの策定、遺言作成を始めとする相続発生前の紛争回避策の構築を得意とする。

遺産分割協議及び遺留分侵害額請求にあたっては、クライアントの要望の実現に向け、粘り強い交渉を行い、調停・裁判を遂行する。

  • この記事を書いた人
篠 昌義(公認会計士/税理士)

篠 昌義(公認会計士/税理士)

株式会社相談室代表取締役。有限責任監査法人トーマツで大企業から中小企業までの監査やコンサルティング、税理士法人で大企業の法人税から個人の所得税まで幅広く実務を担当したのち、自身も経営者としてシェアリングテクノロジー株式会社(東マ:3989)の取締役CFOから代表取締役まで幅広く経験。東証マザーズ上場の責任者を務めるだけでなく、上場後の事業推進、資金調達、M&A、組織改革などを幅広く企業拡大を牽引。 詳しい経歴・プロフィールは当メディアの運営者情報をご覧ください。

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