個人事業主の方は自分で経理をしているという人も多いでしょう。
経理の時に、発生したお金の流れを項目、つまり勘定科目に分けて管理します。
この勘定科目の中に、雑費というものがあります。
しかし、雑費をどういう扱いにしたらいいか、分からない方も多いのではないでしょうか。
雑費という勘定科目どういったものなのか解説していきます。
▼この記事でわかること
・雑費はどの勘定科目にも当てはまらない「その他」
・雑費が多いと税務署が目をつける
・勘定科目をAIが割り当ててくれるクラウド型会計ソフトが便利
雑費ってそもそもどういう勘定科目?? どういう費用を雑費に区分すればよいの?
そもそも雑費とは、どの勘定科目にも当てはまらない費用を処理するための勘定科目です。
「雑費=その他」というイメージでしょうか。
しかしこれだけの説明では、少しイメージがつかみづらいですね。
まずは勘定科目というものがどういうものかおさらいしていきましょう。
勘定科目とはそもそもなぜ存在するのか?確定申告で必要だから?
勘定科目とは、会社や個人事業主が行った取引によって発生した資産や資本の増減、費用や収益について分かりやすく記録し、整理するための科目です。
確定申告は、この勘定科目と、それを管理する簿記のルールに従って付けられた帳簿から支払う税金を計算します。
支払うべき税金を正確に計算するには、勘定科目による資産や費用の分類が必要不可欠なのです。
ちなみに、勘定科目によって整理されたお金の流れを理解できるようになると、経営状態が自然と理解できるようになります。
簿記による帳簿付けや勘定科目による取引の管理は、自分の仕事を正しく理解する手助けにもなるのです。
記帳するときに勘定科目を間違えたらどうなる?
実際に仕事をした時の取引は、どの勘定科目に入れるべきか分かりにくいものもあります。
そのため、経理処理や確定申告の時に「間違えてたらどうしよう」という悩みを抱えている方はたくさんいるのです。
しかし、税務署は税金が正しく計算され、納められてさえいれば問題視しません。
勘定科目が間違っていても、税金の計算に影響が出ていなければ、それによって注意を受けることはほとんどないのです。
経理処理や確定申告の時は、勘定科目の正誤よりも、税金の計算間違いを起こす原因になる要素に目を向けるようにしましょう。
帳簿する勘定科目は何種類あるの?
実は帳簿に乗せる勘定科目は、自由に設定ができます。
これを必ず書かなくてはならない、というルールはないのです。
しかし個人事業主の場合、確定申告をするときに、青色申告決算書や収支内訳書に記載する時は、特定の項目ごとに費用を記入しなくてはなりません。
そのため、この時の項目をそのまま勘定科目として使っている方がほとんどです。
オリジナルの勘定科目を使っている場合もありますが、それは決算書や内訳書にないお金の流れを記載する時くらいです。
確定申告を楽にしたいなら、決算書や内訳書の内容に従っての記入をおすすめします。
勘定科目を項目毎に確認してみましょう
では実際に勘定項目というものがどういうものなのか、ざっと見てみましょう。
以下の図は、青色申告の決算書にも記載が必要な勘定科目の一覧になります。
勘定科目 | 内容 |
---|---|
租税公課 | 固定資産税や自動車税等の税金や、商工会議所や同業者組合等の会費や組合費の支払い |
荷造運賃 | 荷造費や運賃 |
水道光熱費 | 仕事をしている自宅や事務所で使用した水道代や電気代、ガス代等の支払い |
旅費交通費 | 仕事をする上で使用した電車賃やバス代、宿泊費 |
通信費 | 仕事をする上で使用した電話代やネット代、携帯電話代 |
広告宣伝費 | 新聞やテレビでの宣伝費用、広告用名入りグッズの費用、ショーウィンドーの陳列装飾にかかった費用等 |
接待交通費 | 打合せ時の飲食にかかった料金やお車代等、事業を営む上で必要と認められる接待などの費用 |
損害保険料 | 事務所の火災保険料や、仕事で使う自動車の損害保険料等にかかる費用 |
修繕費 | お店や事務所、自動車や機械、部品の修理の際かかった費用 |
消耗品費 | 帳簿や文房具、仕事に使う用紙や包装紙の消耗品を購入した時にかかった費用、原則10万円未満の什器備品の購入費 |
減価償却費 | 原則10万円以上の1年以上使用するも備品などの購入代金を数年に分けて費用計上するための勘定科目 |
福利厚生費 | 従業員の医療や衛生、保険のために事業主が支出した費用や、健康保険、厚生年金、雇用保険等の保険料や掛け金 |
外注工賃 | 修理加工等で外部に注文して支払った場合の加工賃等。 |
利子割引料 | 事業用資金の借入金の利息や、受取手形の割引料等 |
地代家賃 | お店や事務所を借りていた場合の家賃等 |
貸倒金 | 売掛金や未収入金、貸付金等が、得意先の資産状況や支払い能力等から見て、その全額が回収できないことが分かった時に、回収できない金額を費用処理する科目 |
経理しているとき、必要経費のうち雑費の対象になるものは何がある?
費用には、上表の勘定科目があります。
必要経費の内、雑費の対象になるものは、いったい何が当てはまるのでしょうか。
最初にも少し触れましたが、雑費はどの勘定科目にも当てはまらない費用を処理するための科目です。
個人事業主の場合、仕事をする上で必要だったが、わざわざ費用項目を作るほどではない費用を分ける時に使われることが多いです。
例を挙げると、以下のような物があげられます。
雑費に当てはまる費用例
- 仕事上の勉強で使った本やテキスト代
- 仕事で使う車の洗車代や、事務所の掃除等を業者に依頼した時の費用
- 正月飾り等、特定のイベントに必要な道具の購入
- 引っ越し代等
ただし、勘定科目は自由に設定してもよいという話をさきほどしました。
したがって、勉強で使った本やテキスト代を「図書費」として計上したり、掃除の代金を「清掃費」として計上することもできます。
では、このように、別の勘定科目を作るべきなのか、雑費のままでよいのかよくわかりません。
そこで、以下2点の両方にあてはまれば、雑費のままで処理してもよいと一般的に言われています。
雑費として処理する基準
- 金額が大きくない
- 定期的に費用が発生していない
つまり、お金があまりかからない、臨時的な費用を区分けするために雑費を使う、という訳です。
消耗品費と雑費の違いは?
よくわからない費用を消耗品費にするといった人もいるかもしれません。
そういう人からすれば、雑費と消耗品費は似たような勘定科目に見えるかもしれません。
ですが、消耗品費と雑費は全くの別物ですし、判断に迷うことは基本的にはないと思います。
消耗品費とは特定の金額以下の備品を買ったときに使う勘定科目
まず、消耗品費がどのような科目なのかを知りましょう。
消耗品費は、仕事で使う文房具やコピー用紙等、少額の消耗品を購入した時に使用される科目です。
原則10万円未満、青色申告をしている場合は30万円未満の備品を購入した時に使用されるのが一般的です。
消耗品費の範囲は広い!消耗品費に入ると思われるものは全部消耗品費!
実際の仕事では、消耗品費か雑費かが分かりにくい費用が発生する場面もあります。
しかし、悩んだら全て消耗品費として計算してしまう方が良いでしょう。
というのも雑費は元々一年間通した金額がゼロでも問題ない科目である上に、雑費が増えすぎると確定申告や経費分析に悪影響を与えてしまいます。
雑費に分類するものをわざわざ考える必要はありません。
雑費と雑損失の違いは?
経理の勉強をしていると、雑損失という言葉を見かけます。
雑費と同じ「雑」の字が使われているので、同じように使えるのではないか、と考える方も多いのではないでしょうか。
この2つですが、微妙な違いがあります。
雑費と雑損失の違い
- 雑費 …営業活動で発生した雑多な経費
- 雑損失 …営業活動以外で発生した費用や損失
雑費は仕事に関係した活動で発生した小さな費用等を管理するために使われます。
雑損失は、仕事とは関係のない所で発生した損失を処理するための科目です。
雑費は通常の営業の範囲内で普段はあまり使わないイベント費を支払った場合等に使います。
雑損失は、商品が盗難にあった時の処理や、帳簿の現金がどうしても合わず、その原因が分からなかった時に調整するための科目として使用されます。
したがって、雑損失は通常の営業ではありえないハプニングが発生した時に使う勘定科目と覚えておくとよいでしょう。
実は、雑損失は法人の会計処理でよく使われる勘定科目です。
これは法人の会計では営業利益、経常利益という段階での利益を出すことを求めていることが原因しています。
つまり、雑費を営業上の費用、雑損失を営業外の費用として分けることで、雑費は営業利益と経常利益に反映される費用、雑損失は営業利益には反映されないが経常利益には反映される費用として整理する必要があったのです。
一方で、さきほども伝えましたが、個人事業主は税金があっていれば問題なく、営業活動で発生した費用なのか営業外で発生した費用なのかを分ける必要は特段ありません。
そのため、個人事業主として仕事をしていて雑損失にあてはまるような費用が発生した場合には、雑費として処理してしまうケースが多いと思います。
税務署は雑費が多いと警戒する
さきほど、消耗品費と雑費に悩んだら全て消耗品費に入れてしまった方がいい、と解説しました。
これは、雑費が税務署にチェックされやすい科目であることも関係しています。
次の項目では、税務署がなぜ雑費をチェックするのか、怪しまれないためにはどうしたらいいかについて解説していきます。
税務署は税金を払うのを逃れていないかどうかをチェックする機関
まず、どうして税務署は雑費に注目するかについて知っていきましょう。
これを知るには、税務署が何を考えているかを知らなくてはいけません。
税務署は税金の支払いが正しくなされているか、支払い不足がないかどうかをチェックする機関です。
当然、税金の支払いから逃れようとしている人を捕まえるのも、税務署の仕事です。
では、税金の支払いから逃れようとする人は、どうやって税金の支払いをごまかしているのでしょうか。
多い手口としては、以下の3つがあります。
税金をごまかす例
- 利益を過少計上する
- 経費を過剰計上する
- 税金の控除を多額にする
これらの手口が使われていないかを税務署はチェックするのですが、雑費は経費の過剰計上が疑われる時にチェックされます。
これは、雑費の特徴が、経費の過剰計上をする上で都合がいいためです。
雑費は通常使わない科目だから目をつける
これまで雑費について解説していきましたが、雑費はどの科目にも振り分けられない費用を処理するための科目です。
だからこそ、一年間通しての金額がゼロでも間違いにはなりません。
逆に雑費がたくさんあるというのは「何に使ったか分からない費用がたくさんある」ということです。
雑費が増えれば費用の総額も増えますから、その分税金の支払う額も抑えられます。
雑費がたくさんある状態というのは、経費の過剰計上による脱税を疑われてもおかしくない状態なのです。
税務署もそれを理解しているからこそ、雑費の金額を注意深くチェックしています。
雑費にいれてもよい金額の範囲は?
では、雑費に入れてもよい金額の範囲というのは、どれ位なのでしょうか。
これは明確な範囲が決まっている訳ではありませんが、税務署が雑費をチェックする理由から考えると、できればゼロが一番望ましいです。
一般的な目安としては、全体の5~10%程度の金額が目安とされていますが、気にする必要はありません。
滅多に使わない費用が出てしまうのは、場合によっては仕方のないことです。
金額にかかわらず雑費にすべきと思えば雑費で計上しましょう。
雑費が多く出てしまっても、経営上必要な経費であることが明確に分かれば、税務署も指摘しません。
摘要欄等にどんな費用か、どこに払ったかといった内容を摘要欄等に記載しておきましょう。
経理作業をしていて雑費をよく計上している、気になると感じた時は、雑費以外の計上方法を探してみましょう。
他の勘定科目に計上できないかをまず考え、もしそれができない場合は、新しい勘定科目を設定して計算することをおすすめします。
一番やるとダメなのは、税務署が見たら指摘されそうだな、グレーだなと思う費用を雑費に詰め込むことです。
素人がよくやりがちですが、税務署からしたらむしろ怪しさしかありませんので絶対にやめておいてください。
個人事業主が雑費の仕訳をうつときの注意点
では最後に、個人事業主が雑費の仕訳をうつ時に注意した方が良いことを解説していきます。
今までの内容と合わせて、こちらもしっかり覚えておきましょう。
雑費の課税区分に注意
雑費はその特徴から、色々な性質の費用である可能性があります。
そのため会計ソフトでも消費税の課税区分が設定されていないことが多いです。
例えば給料であったら「不課税」が原則であるため最初から「不課税」として処理するように設定されています。
一方で「旅費交通費」は国内の移動であれば基本的に課税取引ですので「10%課税」として処理するように設定されています。
このような初期設定を基本的にいじる必要がないため、消費税の課税区分を間違えることはあまりありません。
しかし、雑費の課税区分は内容次第で色々な可能性がありえるため、通常自分で設定しなくてはなりません。
具体的には、課税対象、課税対象外、非課税、不課税などの様々な可能性がありえるわけです。
この設定を間違えると税務署からの指摘を受ける可能性がありますので、間違いのないように気をつけましょう。
個人事業主と法人で雑費や他の勘定科目の使い方は基本的に一緒。簿記の本などでも勘定科目は勉強できる
勘定科目の使い方は、個人事業主と法人で変わる、という訳ではありません。
一般的な簿記のテキストでも十分勉強できます。
個人事業主で帳簿付け等を自分でやっている方は、法人用の簿記の本や簿記試験のテキスト等を持っていると、経理の問題で困った時に役立てられます。
もし余裕があるなら「簿記検定」などの資格試験に挑戦するのもおすすめです。
ただ「簿記検定」などのテストは古臭い商慣習の仕訳が中心に出てきます。
実務的なことを学べないこともおおいにあります。
結局は資格と合わせて実務経験が大事になるということは付け加えておきます。
経理を事業の管理、分析目的に使う場合は、雑費を使わない方がよい
雑費は、税務署の指摘を受けやすいです。
ですが、業務上必要な経費であることをしっかり証明できれば、金額が多少大きくても問題ありません。
仮にすべての費用を雑費として処理しても究極的には問題ありません。
(税務署からはめちゃくちゃ目をつけられますが・・・)
しかし、経理を事業管理や分析に活かそうとした場合は、雑費が多いと管理や分析ができなくなります。
雑費は様々な内容の仕訳が含まれています。
雑費が多い状態は、ちゃんと仕訳がうまくされていない費用が大量にある状態なため、何に何円つかったのかがわかりにくいということです。
費用、つまり支出の状態を正確に把握できなければ、事業の管理や分析は難しくなります。
雑費が大量にある、毎月金額が変動しているという場合は、雑費の仕訳を見直しましょう。
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まとめ
雑費は他の勘定科目に入れられない費用が出た時に使用する科目です。
理解すれば簡単な勘定科目ですが、多用すると確定申告や事業管理・分析に悪い影響を与えてしまいます。
雑費はできることなら一年間通してゼロを目指し、どうしても発生してしまう場合は、事業上必要な費用であったことを証明できるようにしておきましょう。
また、仕訳の際に別の勘定科目が使えないか検討することも忘れないで下さい。